目を閉じたに、目を開けたまま口付けていると、そろそろと薄目を開くのが見えた。
「おい」
 叱り付けると、ぱっちりと目を開けた。
「惇さんは、目ぇ開けてるのにー」
 ぶうぶう言うのに閉口する。
 おざなりに宥めつつ、電気を消した。寝室に動いてもいいが、それまでにまた萎えることでも言われたらたまらない。幸いソファは大きく、そういう行為に使うにもさして不便はなかろう。
 思いつつ、の減らず口は自己防衛の一つなのかもしれないと閃いた。の減らず口に付き合いきれない輩は、自然に周囲から離れていったからだ。
「俺が尋ねたこと以外、口をきくな」
「おーぼーだ」
 ぶうぶう。
 は、断固としてこーぎするーと拳固を天井に突き出した。
「あのな。痛いのは、嫌だろう」
 の目がきょろりと揺れ、こくりと頷くと神妙な面持ちになった。
 そもそも、しなければいいだけの話なのだが、おかしな話で夏侯惇もも『する』ことに何の迷いも躊躇いもない。『する』と決めたのだから『しなければ』と、奇妙な固い決意があった。
 改めて口付けを交わす。
 舌を差し入れると、は驚いたように大きく口を開け、漏れた息が間抜けな音を立てた。
 執拗に追い回し、舐め上げると、は何か言いたげに目を開ける。
 夏侯惇の隻眼が睨めつけると、慌てて目を閉じた。
 向かい合わせなのがいかんのかもしれんな。
 夏侯惇は思いつくまま、をひっくり返した。
 そのまま服を剥ぎ取る。幼児の着替えをさせているような気になるが、夏侯惇は敢えて考えないことにした。
 全裸に剥かれても、は緊張感のないまま足を揺らめかせる。
「おい」
 声を掛けると、が振り返る。律儀に目を閉じていた。
「四つん這いになって、尻をこちらに向けろ」
 こく、と頷くと、は夏侯惇の言うままの姿勢を取った。
 少しは恥ずかしがってくれれば話も早いのだが、期待するだけ虚しい。諦めての尻に顔を埋めた。
「……ひ、んっ……?」
 舌を伸ばして陰核を突いた途端、の声が如実に変化した。
 は慌てて口を押さえる。
「惇さん」
 不安げな声が夏侯惇の気を良くした。
 こうでなくては。
「黙っていろ」
 夏侯惇の命令に、は不服げに眉を寄せたが、そのままおとなしく目を閉じ顔を正面に向けた。
 手で口を押さえている為、尻を高々と上げた体勢に変わる。
 やりやすくなったと、夏侯惇はの尻に手を添え秘裂を貪る。
 試すように、舌の向きを変えたり強弱を着けて舐め突いたりしていたが、戯れに眼前にあるの後孔を突いてみた。
「ひゃんっ!」
 途端にが跳ね上がり、抗議するように夏侯惇を睨みつける。
 その顔が赤い。
 ほう、と夏侯惇はすぐさま察して、無理矢理を組み敷き尻に舌を這わせた。
「やだ、惇さん、くすぐったいっ!」
 じたばたと暴れるのを制し、舌の動きを止めずに嬲る。
 も、細身にしてはそれなり力がある方だが、所詮は女の力であって夏侯惇を凌駕するものではない。
 徐々に抵抗する力が弱まり、仕舞いには拳を握って声を殺し始めた。
 尻が弱かったか、と埒もなく感心して、秘裂の方に指を這わせる。
「あ、んっ!」
 の声が可愛らしく漏れ、困惑して振り返った顔が赤く染まっていた。
 秘裂を摩ると、くちゅくちゅと音が立ち始めた。
 不感症も疑っていたが、そうではないとわかり、夏侯惇は少し安堵した。
 舌で後孔を、指で陰核を刺激し続けていると、の体がふるふると震え始めた。
「惇さん……おしっこ……」
 無視を決め込むと、は夏侯惇の腕から逃げ出そうともがき始めた。
「うるさい、漏らせ」
 却って濡れていいかもしれん、などと適当なことを考えていると、はまたもや『おーぼー』と喚きだした。
先輩に、言いつけてやるッスー!」
 可愛くないことを言うので、指に唾液を塗りたくって後孔に突き込む。
 の体がびくんと跳ね上がり、体を捻って逃れようとする。
 涙を浮かべた真っ赤な顔が、浮かんだ腰と大きく開いた足の間から見られた。
 にしては艶かしい刺激的な眺めに、夏侯惇の雄も強く反応を返す。
「おしっこ、漏れちゃった」
 涙目で呟くので、指を伸ばして確認すると、ぬるぬるとした蜜が溢れているのがわかった。
「これは小便じゃない」
 の性感を戒めていた鎖が完全に断ち切られたと察し、夏侯惇はの体をひっくり返した。
 足を閉じられないように体を割り込ませると、の耳に舌を這わせる。
 戸惑ったようなが、きょろきょろと不安げに視線をぶつけて寄越すが、夏侯惇はもう意にも介さなかった。
 冷たい観察の目ではなくなっていたから、気にもならない。
「惇さん、ぞわぞわして気持ち悪い」
「それは気持ち悪いんじゃない」
 端的に決め付け、ネクタイを緩めて解くとに目隠しをする。
「惇さん、これじゃ何も見えなくなっちゃう」
「お前は意識を散らし過ぎだ、少し黙って集中しろ」
 思うところでもあったのか、は小さく唸りながらもおとなしく口を噤んだ。
 夏侯惇もそれ以上の無駄口を慎み、の感じる場所を探り当てることに意識を集中する。
「ん……」
 の肌がぴく、と跳ね上がる箇所に行き着くと、丹念に舌で愛撫して時に朱を散らした。
 徐々にの体が熱くなってくるのを感じながら、夏侯惇はその全身を隈なく舌で辿る。
 頃合を見て体を起こし、我慢を強いていた息子をの入り口に押し当てた。
「惇さん、それ、何?」
 が驚いたように声を張り上げた。
 それと言われても説明のしようがない。ストレートに言おうが気取って回りくどく言おうが、夏侯惇の興が削がれることはまず間違いない。
 はいやいやをするように身をくねらせる。
 艶かしいと言えば言えなくもない。
「それ触ると、何か変な感じするデス。それで触るの、やめて」
 夏侯惇は無言のまま、先端をの陰核に擦り付けた。
 の膝が跳ね上がり、足を閉じようと力を篭めるが、夏侯惇が体を入れているから叶わない。
「やん、惇さん、やデス、それ、やだ」
 大きく擦り付けると、互いの淫液が交じり合ってにゅるにゅると滑る。
 の息が荒く弾んだ。
「や、惇さん、おしっこ漏れちゃうっ」
「挿れるぞ」
 先端をねじ込むと、初回の抵抗が嘘のように飲み込まれた。やはり唾液で濡らす程度では無理があったのだろう。
 は不意を突く侵入に体を強張らせ、唇を噛み締めている。
 それでもを傷付けるのは最小限に留めようと、夏侯惇は慎重に腰を進めた。
 ずぷ、ぬぷと不穏な音が小さく漏れる。そのたびにの体がびくびくと跳ね、夏侯惇は締め付けてくる膣壁に眉を顰めた。
「惇、さん……」
「痛むか」
 こくこくと頷くに、夏侯惇は腰の動きを一度止めた。
 ところが、途端にから非難の声が上がる。
「やっ、止めたら、やっ!」
 困惑しつつ、再び動きを再開させる。の口がわずかに開き、艶めいた吐息が漏れた。
「痛むんじゃないのか」
「……痛い、けど、何か、すごく気持ち、イイ……」
 ひくん、との体が揺れた。
「惇さん、気持ち、イイって言ったら、何か、もっと気持ちよくなってきた……」
 ひくひくとの体が揺れ、夏侯惇の肉を刺激する。
「あ、ん、何か、ホントに、気持ちよく、なって、あん、あ、惇さん、変、デス、変な、気持ち……」
 ちょうどその時、夏侯惇のすべてがの中に納まった。
 痛いほどに夏侯惇を締め付けるの膣壁は、処女特有のざらついた感触を備えて強烈な悦を生み出す。
 動きたいのだが、一度動いたが最後無茶をしてしまいそうな予感に囚われた。
「惇さん、動いて」
 が上擦った声で懇願する。
「もっと、気持ちよく、して。ぞわぞわってして、変ななの。痛いのに、気持ちイイの、だから、もっと、して」
 おねだりするように、の中もきゅうきゅうと夏侯惇を締め上げている。
「……どうなっても、知らんぞ」
 動きやすいように体勢を整えると、律していた昂ぶりを欲望のままに解放した。

 目をつぶったまま動かなかったが、もぞりと身動ぎをした。
 夏侯惇は、事後の余韻を煙草と共に味わっていたが、気配を感じて背後のを振り返る。
 は目を閉じたままだったが、掛けてやった毛布を引き上げてぬくぬくと包まった。
「惇さん」
「何だ」
 煙草の吸殻を灰皿に押し付け、肺で味わっていた煙草の煙を吐き出した。
「痛いのに気持ちイイって、これってSM?」
 そんなわけあるか。
 目を剥く夏侯惇を置き去りに、はすやすやと心地良い寝息を立て始めた。

  終

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