何だかすっきりしない気分のまま散会し、は姜維と共に歩いていた。
駅からは反対方向なのだが、少し歩いて頭を冷やしたかったのだ。
がそうしたいと言うと、姜維は一緒に行くと言って着いて来た。
夜道は危ないと言うが、姜維の方が余程襲われそうだと思いつつ、口には出さずに飲み込む。
ただでさえ年が離れていることを気にしている様子の姜維は、年下だからこそかを守りたいと口にも態度にも出して主張してくる。
気持ちは有難いが、もう少し肩の力を抜いて、普通にしていたら良いと思うこともしばしばだ。
姜維がどう足掻こうと、の方が年上だという事実に変わりはないし、自身どうしても年上ぶってしまう癖が抜けない。
自然であろうとするなら、事実を認めて意識しなくなるように努力するのが筋だろうと、は考えるようになっていた。
姜維はどう考えているのだろう。
女の目から見ても羨ましくなるような白くつるんとした綺麗な肌は、姜維のあどけない可愛らしさを強調する。
の半歩前を進む姜維は、無言のまま歩を進めていた。
と、姜維がの手を引いて、人気のない神社の中へと入っていく。
夜も更けた頃合の神社は、何だか独特の雰囲気に満ちて足がすくむのだが、姜維はそんなに気付かないのかすたすたと歩いていってしまう。
中に入ってみると、意外に広い。
緑地保全地区にでも指定されているのか、鬱蒼とした木々は暗闇に一層濃い影を落としているかのようだ。
社の後ろに回り込むと、小さな小屋や石碑が点在している。
その一つの傍らにを引っ張ってくると、姜維は突然を抱き締めた。
へ、と素っ頓狂な声を上げると、姜維の顔がぐいっと前に突き出された。
避ける間もなく受け止めると、間髪居れずに舌が滑り込んでくる。
姜維の息は既に上がっていて、如何にも余裕がなさそうな印象を受ける。
先程のの話が、姜維に強い刺激を与えてしまったのだろうか。
しょうもない子やなぁ、と少し呆れ、後は可愛くて仕方なくなった。
幼い、学生じみた過敏さに、本当に学生でもおかしくない姜維の若さを感じる。
キスぐらいなら、と甘んじて受け止めていただったが、姜維は思い掛けない行動に出た。
突然の背後に回り、背中から抱き締めてきたのだ。
違和感を感じて振り返ろうとすると、姜維の手が服の上からの乳房を揉みしだく。
な、と目が点になり、行動が遅れた。
それが決定的なミスとなった。
姜維はの隙を見逃さず、厚いコートを捲くると同時にスカートをもたくし上げてしまった。
黒のタイトスカートは、布地の固さとデザインの割に、動き易い素材で作られている。
だが、それもタイトスカートにしてはの話であって、たくし上げられてしまうと他のスカートより下ろし難いのに変わりなかった。
しかも、背後から圧し掛かられて腰を折るような体勢を取らされると、腰の上までたくし上げられたスカートはどう足掻いても下ろせなくなってしまう。
「ちょ、ま、待って姜維くん!」
「……さん……!」
浮かされたような声が耳元に吹き込まれる。
卑怯や、と思っても、姜維に慣れた体は自然と反応をし始める。
いかん、外や、外に居るんやて、と懸命に自分に言い聞かせるが、却って興奮し始めた神経に我が事ながら呆れ返った。
どうしたら、と半ばパニックに陥った時、ショーツの中に姜維の指が忍び込んできた。
冷たく冷えた指の感触に、鳥肌を覚えると共に足で挟み込んで締め上げてしまう。
狭くなった肉の狭間に、姜維はめげもせず指を這わせた。
「や」
ちゅく、と小さな濡れた音が響き、姜維もも確かにその音を聞いた。
かっと赤くなるの肌が、背後に居る姜維の目にも鮮やかに映った。
指が静かに侵略を始め、その静けさとは裏腹に、の秘裂は潤い高い音を立てる。
「や、そこは、あかん、あかんて、姜維くん……あ、あ、あかん……」
撫でるのに飽いた指は、悪戯げにの膣の中へと侵入を始めていた。指が押し込まれるたび、低い音がの体の奥から湧き立ち体を震わせる。
「楽器、みたいです、とてもいい音が出る、楽器……」
うっとりして囁く姜維に、は限りなく羞恥を掻き立てられる。
潤み切った膣壁は、最早指一本では足りないとを急かしていた。
ふと背後に寒さを感じた直後、押し付けられる熱い肉の感触に思わず声を上げる。
「あっ……あかん、それ、は、あかんて!」
こんなところで、という禁忌への恐れが未だに消え去らない。
と、姜維の指がを激しく掻き鳴らした。
「あン、んっ……!」
嬌声を噛んで堪えるに、姜維が切なげに強請る。
「……さん、私の……分かりますか、ほら、これ……」
足の間に擦り付けられる肉は、がちがちに張り詰めていた。
すぐにも破裂してしまいそうな肉の感触に、の背筋がざわめく。
「ね。さん、ね、いいでしょう、さん」
指が引き抜かれ、姜維の先端が宛がわれる。
ノックするように突付いてくる先端の感触に、の体はがたがたと震えていた。
「ここに、挿れたいです……さんのここに、挿れさせて……さん……」
陥落寸前のに、しかし姜維はどうしてもの承諾なしには許されないのだと言うように、頑なにの承諾を求める。
「コートで、見えないようにしますから、ね、さん」
ぐり、と押し付けられて、自らの蕾が蠕動して開くのを感じてしまった。
姜維が与えてくれるだろう快楽に、期待した神経が焼き切れそうだ。
「あかん、も、あかん……」
すすり泣くようなの声に、姜維はやや怯んで後退った。
「あかんて、も、早くしてぇ!」
小声ながら迸るような声に、姜維は息を飲むより早くの中へ突き込んでいた。
濡れた膣壁が姜維の肉を絞り込むように締め上げる。
「あ、し、締まる、締まります、さん」
目も眩むような快楽に、姜維は埒もない戯言を口走る。
挿入の衝撃に震えていたも、自分の中に在る姜維の存在に歓喜と爛れた悦楽を覚える。
「姜維くん、私、も、あかん……」
膝が笑っていた。
屋外だ、神社という聖域の中だという意識がどうしても打ち消せず、それが背徳となっての神経を異常なまでに過敏にしている。
素直に白状したとおり、許されるならばこのまま達してしまうと確信があった。
「私もです」
耳元に囁き掛けられるだけでも、の肌はひくひくと蠢く。
乱れた様に、姜維は密かにほくそ笑んだ。
「……もう少し、我慢して下さいさん。もう少しだけ、ね」
姜維は体を起こすと、の腰の位置を微妙に調整する。
二人を繋ぐ箇所が見えないようにコートの端を掴みながら、姜維はの中へと己の肉を揺り合わせた。
肌の表面は冷たいのに、身の内は焼けるように熱い。
――あかん、むっちゃ気持ちええ……こないなこと、癖になったらどないしょ……。
半開きの唇の端から、たらりと涎が垂れた。
そんなことにも構えない程、は姜維の熱に酔い痴れている。
「あ、さん、さん、もう……!」
容赦ない突き込みに、の腰骨さえ衝撃を受ける。
今日ばかりは、多少肉が着いていることに感謝したくなった。
「出ます、出る、出……!」
体の内側から、どくん、と大きく脈打つ音が響き渡る。
次いで迸る感触に、の背は弓形にしなった。
「あ、あかん……!」
中に、と気付いた瞬間、の体は悦の波に攫われ、硬直した。
申し訳なさそうに眉尻を下げる姜維に対し、は敢えて眉を吊り上げていた。
屋外でという破廉恥さもさることながら、避妊もしてくれなかった姜維の無神経さに腹が立って仕方がない。
着ける余裕などなかったことに気が付かない自分も阿呆だと思うのだが、それにしても中で全部出してしまうことはないではないか。
子供が出来たらどうする、と詰っても良かったが、結婚しましょうと返ってくるに違いないので言わなかった。今の鶏冠状態で、承諾など出来る訳がない。
「帰るわ」
「み……さん……」
泣きそうな顔をする姜維に、数歩進んだが不意に振り返った。
「……何してんの、タク代、姜維くんが払うんやで」
途端、ぱっと明るくなる姜維に、は複雑な心境に陥る。
こんな真似をされて、もっと怒って良いと思うのに、姜維の喜ぶ顔を見た途端『可愛いな』と思ってしまう自分がつくづく病気だと思う。
こそこそと人目を避けるようにして神社を出る。
大通りに抜けると、タクシーはすぐに捉まった。
を先に乗り込ませたマナーは合格だったが、姜維がさも当然のように己の家の住所を告げているのにぎょっとする。
如何にも嬉しそうにを振り返る姜維の目は、何処か潤んで切なげだ。
もう一戦交える気だとあからさまに知れ、恥じたものだか叱ったものだか分からない。
自身、姜維の意図が分かった瞬間から、再び体が火照り始めていた。
ティッシュで押さえた秘裂の奥から、姜維のものがとろとろと流れ落ちてくる。
それさえ浅い愛撫に思われて、は自分の病気が末期であることを覚った。
姜維が相手なら、何をされても構わないかもしれないとさえ思う。
このことは、絶対秘密にしなければならない。
知られたが最後、いったいどんな目に遭うかわかったものではなかった。
ちらりと目を向けると、ずっとこちらを見ていたらしい姜維がにっこり笑い掛けてくる。
――この、色ボケハムめ。
胸の内で悪態を吐く。
この後何をされるのかと期待している自分にも、あほんだら、と悪態を吐いた。
終