夏侯淵は、己のものを飽かず舐めしゃぶる咲をじっと見下ろしていた。
上手くはない。
けれど、熱の篭もった奉仕に加え、普段の様からは想像だにしない淫蕩に潤む表情が夏侯淵の男を煽る。
こんな顔をして抱かれやがんのか、と、感心すらする思いだ。
口に咥え込んで唇を上下させて扱く。
ぎりぎり一杯の容量を含んで、口の端からは緩い津液が溢れて零れていた。
咲の奉仕に賭ける熱の入れようが理解できなくて、夏侯淵は首を傾げた。
男のそれならまだ分かる。
女もそうなのだろうか。感情の赴くまま、自分が気持ち良くならぬ行為に熱中できることがあるのだろうか。
促されてではなく、当然のように口を開いた咲の方寸が分からない。
慣れていないのが如実に分かるせいか、好き者といった印象でもない。商売女と言う訳でも勿論ないし、手下が上からの命令に従って、と言う風でもない。
やはりココの空気がそうさせるのだろうか、と夏侯淵は思いあぐねた。
そんな話は聞いたこともないが、山と言う場所は元より人里とはまた異なった空気を醸しているものだ。
その気に当てられ、または怯え、それで致したいと思うのやも知れない。
「飲めるか」
夏侯淵が声を掛けると、咲の動きが止まる。
とろんとした目は、恐らく夏侯淵の言葉が伝わっていないだろうと示していた。
「……口開けて、先っぽ咥えてろ」
今度は伝わったのか、咲はおとなしく亀頭を口に含んだ。
夏侯淵が自らの指で肉幹を扱き上げると、指の下で膨れ上がる血管がぴきぴきと青筋を描く。
「イく、ぞ」
短くうめいて解き放った熱は、咲の唇を弾いて盛大にぶちまけられた。
二度三度と勢い良く跳ね上がる先端が、咲の鼻先から顎に掛けてをしとどに濡らす。
「あっちゃー……咥えてろって言っただろ」
村人がいつ戻ってくるかも知れず、焦ったのが間違いだった。
誤魔化しようがなくなって、夏侯淵はしかし、焦るよりは開き直っている己を感じた。
やってしまったものは仕方がない。
手巾を出して咲の顔を拭うと、咲の体が微妙に震えているのが分かる。息も荒く、顔がやたらに赤い。
「立ちな」
半ば無理矢理引き立てると、咲の足元は覚束なくなっていた。
処女か、とちらりと疑問が湧くが、この年で処女と言うことはあるまい。あまり経験がないというのが妥当なところだろう。
ならば、手間が掛からなくて良い。
大事な部分を覆っている厚布をたくし上げると、尻を掴んで引き寄せる。
濡れている秘裂に鼻を押し当てると、むっと濃い女の匂いが漂った。
「ひゃっ!」
夏侯淵の舌が咲の秘裂を割る。強い毛を避けて柔らかな肉に舌を押し付けると、咲の膝ががくがくと揺れる。
崩れ落ちそうになると夏侯淵が容赦なく尻を掴んで持ち上げるので、咲は震える膝を制して立ち続けなければならなかった。
ぴちゃぴちゃと舌が鳴る。
「あっ、あっ、か、夏侯淵様の舌、いやらしいですっ!」
「……やらしくて、気持ちいーだろ?」
夏侯淵が何気無く問い返すと、咲は生真面目に答えて返した。
「はい、気持ちいーですっ!」
目を瞑ってぶるぶる震えている様に、夏侯淵は半ば呆れるような心持ちだ。
「き、気持ちいい、けど、こんなことしてて、いいんです、かねっ……」
「いいんじゃねぇか」
どの道、中の様子は外からも伺えるだろう。
ボロ屋の薄壁では、咲の喘ぎ声は留めようがない。
良くて赤面して逃げ出されるか、悪ければ壁に耳を押し当てて聞き耳立てられるのがオチだ。
聞きたければ聞かせて遣ればいい、と夏侯淵は舌を踊らせる。
「じゃ、じゃあ、じゃあ、ベロじゃない方が、いいんじゃないかな、と……!」
ん、と上目遣いに咲を見上げると、いつの間にか目を開いていた咲が、夏侯淵をじっと見詰めていた。
「か、夏侯淵様ので、したら、二人いっぺんに済むんじゃないかって、あたし……」
潤んだ目が、夏侯淵に請うていた。
「……違うだろ」
「え」
「舌じゃ足りなくなったっつうんだろ。こっちの、太いの突っ込んでくれなきゃ我慢できねぇってんだろ」
夏侯淵が屹立した肉を掴んで見せると、咲の頬が紅潮する。
うっとりとして、それでいて飢えたような突き刺さる視線を向ける咲に、夏侯淵は軽く溜息を吐いた。
「次は、零すなよ」
咲の腰を引き下ろし、自分の足を跨がせる。
先端が秘裂に触れると、咲はびくりと身をすくませた。
「し、し、死んじゃいませんかね、あたし」
「まぁ、死ぬ程気持ちいいかも知れねぇわな」
早くしろと擦り付けると、咲の体がびくびくと跳ねる。
「夏侯淵様の、おっきいですよね」
「あ? ま、それ程でもあるわな」
面倒になったのか、夏侯淵は突然咲の腰を引き摺り下ろした。
ずる、と音を立てて亀頭が飲み込まれ、咲は悲鳴を上げて仰け反る。
「……未だ、先っちょだけだぞ。大袈裟な奴だな」
「だっ、だっ、だって、だってっ!」
ぬぷぬぷと鈍い音を立てて沈んでいくにつれ、咲の表情もきつく強張っていく。
「……おっき、おっきいです、夏侯淵様っ……!」
「うんうん、おっきくて気持ちいーな」
こくこくと馬鹿正直に頷く咲に、夏侯淵は苦笑を漏らした。呆れを通り越して、いっそ可愛いと思えるから不思議だった。
と、夏侯淵の肉を呑み込んでいた膣壁が締まり、不意に進めなくなった。
すべてを納めるには咲の中はきつ過ぎるようだ。
無理矢理押し込むことも考えないではなかったが、挿れたもので腹を裂くと言うのも馬鹿馬鹿しくて、笑うに笑えない。
半ばで止めて、咲の様子を伺うと、安堵しながらもどこか物足りなげに見える。
「もっと、気持ち良くなりたいだろ?」
夏侯淵の揶揄を篭めた問い掛けに、咲はおろおろと逡巡している。
どうしたと問うと、恐る恐る口を開いた。
「……今、もうすっごく気持ち良くて、気絶しちゃいそう、なんです……」
「そうか。でも、もっと気持ち良くなれんぞ」
ん、と腰を軽く揺さ振ると、咲の口がだらしなく開き津液が零れ落ちる。
「ヨダレ垂らす程気持ちーんだろ。もっと気持ち良くなるぞ」
「……頭、おかしくなっちゃいそうです」
くらくらするのか、目を瞑ってしまった。
仕方ない、と夏侯淵は首を伸ばして咲の耳元に口を寄せる。
「俺の方が未だ、全然足りねーんだよ」
ぱち、と咲の目が開く。
「ぜ、全然? 全然なんですか?」
「……あぁ、全然だな」
何か間違った捉え方をしたようだと当たりを付けつつ、夏侯淵は敢えて逆らわなかった。
咲は、しばらく悩んでいたようだが、串刺しにされたまま首を伸ばし、夏侯淵の耳元に囁いた。
「じゃあ、夏侯淵様の好きに、して下さい」
その意気や良し。
夏侯淵がにやっと笑うと、咲もへらっと笑って返す。
「よーし、泣いて止めてくれっつったって、もうやめねぇからな。覚悟しろ」
「えええ」
それは、と言い返し掛けるのを、夏侯淵の肉槍が黙らせた。
夏侯淵の精が、腹の中に迸る。
そう思った瞬間、咲は目を覚ました。
あれ、と我が事ながらいぶかしく思う。
普通は、目が覚めるところではなかろう。頂点極めて気絶するならまだしも、ならばそれまでの自分は貫かれながら眠っていたとでも言うのか。
ともかくと体を起こすと、脇で胡坐を掻いていた夏侯淵がかったるそうに咲を振り返る。
「ようやく起きたか。エライぐーすか寝こけてやがったな」
「ね、寝てましたか、あたし」
やはり眠っていたのかと目の辺りに手を遣って、ふと気が付いた。
顔に吐き出された筈なのに、その残滓の気配もない。
すべすべの肌は、年の割には若いと微妙な評価をされるいつもの肌の感触だった。
夢?
それにしては妙に現実感があった。
夏侯淵が咲を指で達かせてくれて、そのお返しに咲は夏侯淵のものを口で慰めた。
それは間違いない。
筈だ。
多分。
どうにも腑に落ちなくなって、咲は頭を抱えて悩み始めた。
「……どうした。夢見でも悪かったか」
ずいぶんうなされてたからなぁと呑気に呟く夏侯淵に、咲ははっとして詰め寄った。
「あ、あの。あたし、何か言ってました!?」
夏侯淵は咲をちらりと見遣り、何とも言えない顔をしてそっぽを向いた。
「あの。あのあの、あたし、ホントに何か言ってました!?」
「……あー、まぁ……な」
歯切れの悪い夏侯淵に、咲は混乱を極める。赤くなるやら青くなるやら、ただひたすら何を言ったか問い詰めようとする。
そんな咲に、夏侯淵はしみじみと言って聞かせた。
「この世の中にはな、知らぬが花ってことがあるのよ」
結局、咲の寝言の全貌は、夏侯淵の胸の内に仕舞われてしまったのだった。
終
【双屋のComment】
そんな訳で夢オチでした。
挿絵:赤駒様(Comment等はこちら)