■ 凪砂 V.S 葵

■お色気対決

 よりにもよってコレか、とは、どちらの台詞だったか。
 ともかく、この対決に名を連ねた時点で、凪砂も葵も深々と溜息を吐いた。
 なまじ顔見知りであるから、対決にも気合が入らない。
 まして、題目が題目だけに『もっと乗り気になれ』と言う方が無茶だ。
 それでも凪砂が踏ん切りを付けたのは、偏に孫堅の性格を慮ってのことに過ぎない。
 あの、見た目を裏切る妙に悪戯好きのちょい悪親父は、この手の悪ふざけが殊の外お好きなのだ。
 だいたい、凪砂が恥ずかしがって頬を染める、などという『らしからぬ振る舞い』を見せれば、却って手を叩いて喜ぶくらいのことはしてくれそうなものだ。
 いっそ堂々と、開き直るくらいのつもりで。
 そう自分に言い聞かせて勝負に臨んだ凪砂に、とんでもないハプニングが待ち受けていた。
「……ひゃあああっ!?」
 艶やかな絹のせいか、葵の項で固く結ばれていた筈の結び目が、はらりと解けて落ちたのだ。
 思いがけない事態に、凪砂は常の冷静さを忘れて固まった。
 幸い、葵の必死の抵抗(?)により眩しい双丘が露になることはなかったが、思わぬ出来事に会場は俄然沸き立ったのだった。

――勝敗結果:葵の勝利 

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