■お国自慢対決
ある意味『最も激戦となる』であろうこの題目を引き当てたのは、間の抜けたことに同国に属する鹿音と柊だった。
籤を引いた上での結果とはいえ、さすがにこの題目ではならないと誰もが自然に『再考』の二文字を頭に思い浮かべていた。
だが。
「まぁ、これは素晴らしい題目とお相手を頂戴いたしました」
「ですね。思う存分、目一杯戦いましょう、鹿音さん」
妙に乗り乗りで進み出た二人は、まず互いの健闘を祈るようにがっつり固い握手を交わす。
どういうことかと居並ぶ観客・審査員を前に、鹿音と柊は『お国自慢』の勝負の火蓋を切った。
「魏は、才ある者、取り分け努力を怠らない者には必ず報いる、信賞必罰明らかな国で」
「徳だの恩だの、口ばかりの幻想で政事を腐敗させない、唯一現実味のある策を奉じていて」
交互に、また高らかに魏国の美点を謳う。それこそ二人の喉が渇きに引き攣るまで、長々と朗々と、語られ続けた。
最早対決などではなく、ただ単に魏国が如何に良い国か、噂ばかりに踊らされ、肝心要の国の本質を見誤ることが如何に愚かなことかを、他国の重鎮相手に堂々と啓蒙しているようなものだ。
してやられましたね、とは某国の丞相の言葉だったという。
――勝敗結果:引き分け