■料理対決
燈珂と艾梵が引いたのは『料理対決』だった。
無論、料理人並とまではいかずとも、どちらもそこそこ以上の腕は持ち合わせている。
極々平和な戦いになるかと思われたが、そうはいかない。
両者共に現代人であるが故、また、こちらの世界に来てよりは厨房に入ることもなかった為に、いわゆる『調味料』の類がまったく異なっていたことを失念していたのである。
「塩はあるけど……何だか岩塩とかとも違う感じ……山椒なんかはさすがに分かるけど……」
燈珂の表情は冴えない。
調味料を入れた小壺には、一つ一つ丁寧に名称を記した紙が貼られてはいるものの、その名称から味の類を連想することが出来ない。
ましてやそのすべてを使いこなすことなど夢のまた夢でもいうべきものだった。
書物の知識から多少は見当が付けられた艾梵は、ぎこちないながらも料理を仕上げていった。
――勝敗結果:艾梵の辛勝