「俺は、男だからな」
馬超は事も無げに言い放った。
「俺も、男だよ」
馬鹿じゃね、と言い返すと、馬超は難しげに眉を寄せて悩み始めた。
別に、悩むようなことでもない。
ただ、ここ最近俺の方ばかり下になることに、不満を漏らしただけの話だった。
俺ばっか突っ込まれてないか、と突っ込んだら(否、シャレでもそういう意味でもなく)、返ってきたのが冒頭の台詞だった次第だ。
何に付け体の負担もあるし、挿れたいのでもなく本当に何となくそう思ったまでの話で、しかし俺は何となく腹を立てていた。
「は、俺に抱かれるのが嫌なのか」
「嫌だね」
もうすっかりそんな気も萎えてしまい、俺はもそもそと眠りに就く準備を始める。
その肩を引っ張られ、ぐりんと引っ繰り返される。
いつもいつも思うのだが、俺も一応男なので、こんな扱いは正直凹む。
それは、馬超が馬鹿力なのは分かってはいたが、あからさまに行動に移され力の差を見せつけられては、落ち込むなと言う方が無理だ。
一応、俺だって男なのだから。
俺の複雑な心境を知ってか知らずか、馬超は今にも泣き出しそうな顔をしている。
「……ヤらせてくれんなら、ヤる」
どうしてもそうしたいと言うわけではなかったが、行き掛かり上そんな条件を突き付ける。
ところがだ。
「断る」
馬超は即断即決して、さっさと俺を組み敷いた。
意味が分からん。
思わぬ展開に目を白黒とさせていると、馬超は勝ち誇ったように宣言した。
「今のの言葉で、俺は傷付いた。慰謝料として、今日は俺がを抱く」
どこで覚えてきた、そんなカス台詞。
もう本当に面倒になって、俺は体の力を抜いた。
馬超はこれ幸いと満面の笑みを浮かべている。
俺は、当然のことながら、明朝『不当待遇』の四文字を置き手紙にし、しばしの家出&家事放棄を敢行するつもりなのだが、無論馬超がそんな俺の腹の内を知る由もない。
ざまを見ろ。
終