からーん、からーん……。
 何処からともなく高らかな鐘の音が聞こえる。
 鐘、あれは鐘の音か。
 初めて聞く音のはずなのに、どうしてそれと分かるのだろう。
 この文官のような、けれど薄手の、膝から下が出てしまっている丈の短い不思議な服は何だろう。やたらとすーすーとするのだが。
 それに、この不思議な地面は何だろう。規則的に並べられた、赤茶けた四角い石。とても自然に為されたものとは思えない。見事な、美しい文様を描き出している。これは、そう、水面に落ちた雫が波紋を描いているような。

 姜伯約は、じっと赤レンガの石畳を見つめていた。本人は分かっていなかったのだが、モスグリーン色をしたワンピース状のセーラー服を着ている。
 背中をぽんと叩かれて、びくりと肩を震わせる。
 振り返ると、がそこに立っていた。姜維と同じ、モスグリーンのセーラー服を着ている。
殿」
 ほっとして笑みを浮かべる。
 だが、は目を丸くして首を傾げた。
「どうしたの、『殿』だなんて。殿、なんて、目下の人に付ける敬称よ」
 ちゃんといつも通り、『お姉さま』と呼びなさい。
「お、お姉さま?」
 戸惑う姜維には気付かなかったようで、はうんうんと大きく頷いた。
 おもむろに姜維の耳に唇を寄せる。
「まぁ、私は何でもいいんだけどね。一応、人目があるでしょう?」
 顔を離すと、くすくすと笑う。
 スカートが翻り、膝を隠していた裾がふわりと揺れて、白い脚がちらりと見えた。
「さ、帰りましょう」
 促されて、うろたえながらもを追う。手には皮で出来た四角いものを握っていた。取っ手のようなものがついており、持ちやすい。物を入れて運ぶもののようだ。
 これは便利だ、と繁々と見ていると、が不思議そうな顔をして振り返る。
「どうしたの、伯約。今日の貴女、何か変ね?」
 変といえばが変なのだ。
 言葉遣いもいつもと微妙に違っているし、何より見慣れたよりも、ずいぶん幼い感じがする。
 前方に、姜維達と同じ服を着た婦女子が三人ほど並んで立っている。
 二人を凝視して、何故だか一様に頬を染めていた。
 何だろう、と姜維が訝しげに見ていると、その内の一人が突然、ぴょこりと頭を下げた。
「ご、ごきげんようさま、姜維さま!」
 残る二人も釣られたように頭を下げ、同じように叫んだ。
「ごきげんよう、皆様」
 はにっこりと微笑む。姜維がきょとんとしていると、三人からは見えないように肘打ちしてきた。
「ご、ごきげんよう……」
 どもりながらもを真似て言うと、三人はきゃあっと甲高く叫んで走っていってしまった。
 姜維が呆然としていると、が苦笑して姜維を見上げる。
「駄目だね、伯約は何時までたっても慣れないんだから。あの子達、あんたに挨拶したくて頭下げてるんだから、ファンサービスくらいちゃんとやって上げなさい」
 ふぁんさーびす。
 姜維が困っているのをどう取ったのか、は『まぁいいわ』と笑って歩き出した。姜維も慌てて後を追う。
 は、もうそれきり口を聞かず、姜維もまた何を言っていいのか分からずに口篭った。

 扉がずらりと並ぶ四角い建物に来た。見上げるほど高いそれに、圧倒される。
 の跡を追って四角い狭い部屋に入ると、が四角い何かに向き直った。扉が閉まると、不気味な音と共に体が浮き上がる。気色悪さに歯を食いしばるが、は平然としている。姜維は、男の面子に掛けて耐えた。
 乗った時と同じように勝手に扉が開き、はすたすたと外に出る。姜維も慌ててを追った。
 見慣れずに、姜維がきょろきょろしていると、が呆れたように振り返る。
「何してるの、自分の家のマンションでしょう」
 鍵、開けちゃうわよ、と言うなりは扉から突き出た丸いものに鍵を差し、次いでその下の鍵穴にも別の鍵を差込んで開けた。
「最近は物騒だから、ワンドアツーロックは基本だけど……ちょっと面倒ね」
 わんどあつぅろっく。
 聞きなれない言葉に姜維が立ち竦む。
「どうしたの、家主が客より後に入るのっておかしくない?」
 鍵はもらったけど、ここは貴女の家でしょう。
 の言っていることがよく理解できない。
 ここが、自分の部屋?
 焦れたが、姜維の手を引っ張り室の中に押し込む。
 広いとは言い難い石床で、は姜維の頬に手を当て、自分の方に引き寄せると目を覗き込んだ。
「どうしたの、今日はホントに変。ストレスで、どうかなっちゃったの?」
 すとれす。
 やはり聞きなれない言葉に、姜維はおろおろとするばかりだ。
 は溜息を吐くと、反転してドアに鍵をかける。やや高くなっている段を上がり、姜維を手招いた。
「……靴! 靴脱いで!」
 続いて上がりこんだ姜維に、が悲鳴を上げる。
 何時の間にかは靴を脱いでおり、姜維は履いたままだった。

「ホント、どうかしちゃったんじゃないの……ほら、もう大丈夫だから脱いじゃいなさい」
 姜維が困惑していると、が手を伸ばして姜維の着ているセーラー服をむしるように剥いでいく。
 足を上げさせられ、セーラー服を脱ぐと、は椅子の背もたれに無造作に引っ掛ける。そのまま姜維の白い上着に手をかけ、ボタンを外していく。
 が着ていた『地元の服』に良く似ていると気がついた。
 ボタンが外されると、胸に白い布をつけているのが見えた。何だか息苦しいと思っていたのだが、これのせいだったらしい。
 は、姜維に抱きつくようにして手を後ろに回す。一瞬苦しくなって、胸のすくような開放感を感じた。楕円形の何かがぽとぽとと足元に落ちた。
 がしゃがみ込んでそれらを拾い上げると、やはり椅子に置く。
 上目遣いに見上げるが、少し頬を染めて姜維を見上げた。
「うちは夏でもジャージの許可出てるからいいけど、よくばれないよね……」
 でも、ちゃんと挟んでおかないと、いい加減ばれるよ。
 何を言っているのだろう、と姜維は首を傾げた。
 ほぼ全裸に剥かれて、恥ずかしさを感じないわけではないが、脱ぎ方が分からなかったのでに任せるしかなかったのだ。
「ほら、早く脱いで……蒸れるから、ヤなんでしょ?」
 どうしてもが言っていることが分からない。
 困っていると、不意にの目の色が変わった。
「……ひょっとして、したいの? 伯約」
 姜維の前に立つの顔が、少女のそれから女の顔に変わる。
 どきりと心臓が跳ねて、何も言えなくなった。
「……脱がせてあげる……」
 がもう一度しゃがみ込み、姜維の穿いているショートパンツに手を掛ける。下着ごと足首まで引き摺り下ろされて、姜維は完全に裸体を晒した。
 肩に掴まらせて、姜維の足首からショートパンツと下着を外すと、はやや前屈みになった姜維の股間に口付けた。
「あ」
 姜維が驚きの声を上げた。柔らかな舌が、姜維の肉をゆっくり舐めている。こそばゆいような、背中に鳥肌が立つような感触に、姜維は震えた。
「だめ、ちゃんと立ちなさい」
 決して咥えようとはせず、舌だけで姜維のものに愛撫を続ける。一気に血が流れ込み、姜維の肉は突然雄々しく天を仰いだ。
 は、濡れた顎を指で軽く拭いながら、姜維に向け悪戯っぽく笑った。
「元気だよね」
 姜維の顔が赤くなる。
 は、姜維の手を取って別室に導いた。
 扉を開けると、薄暗い部屋の中に大きな寝台が一つ据えられている。窓はあるが、木戸か何かで閉ざしてしまっているようだ。
 が何かを拾い上げる。ぴ、と高い音がして、天井近くにあった四角い箱から涼しい風が吹き込んできた。
「伯約、そこに仰向けになって寝て」
 言われるがまま、しかしおずおずと牀に上がると、が足の間に割って入ってくる。
「……男の子なのに、女子高なんかに入れられたら、ストレスも溜まるよね……」
 は、手早くショーツを脱ぎ捨てると姜維に覆いかぶさってくる。四つん這いになって見下ろされると、何故だかその姿が異様に卑猥に思えて、姜維は生唾を飲み込んだ。
 そんな姜維に、が笑う。淫靡な笑いだった。
 屈みこんで、股間で期待に震える猛りに口付けを落とす。
 祈りを捧げるように胸の前で手を組むと、は目を瞑った。
「……神よ、貴方の哀れな子羊の、愚かな振る舞いをどうぞお許し下さい」
 組んでいた手を解き、目を開けると、は悪戯っぽく微笑んだ。
「可愛がってあげる」
 首筋に顔を埋められ、舌先でくすぐられる。胸のしこりに指を這わされ、小さく固くしこった先端を摘ままれた。息が上がっていくのを感じて、恥ずかしさにを見遣れば、もまた頬を上気させて肌をしっとりと汗で濡らしていた。
「……ごめんね、伯約。もう、挿れちゃうね」
 は身を起こすと、枕元の小さな引き出しから何かを取り出した。小さく、ぴり、と何かを破く音がして、姜維は興味を引かれて顔を上げる。
 透明がかった白っぽい円状のものを、姜維の猛りに被せているのが見て取れた。するりと伸びて、猛りを包み込む。着けている感じは殆どしなかった。
「女の子同士で、子供が出来たらまずいでしょ」
 照れ臭そうに笑うと、はスカートを軽く摘み上げて姜維の猛りの上にしゃがんだ。手を後ろに回し、スカートの中に突っ込むと、姜維の猛りの根を掴んで軽く抑える。
「挿れちゃうよ」
 姜維の返事を待たず、猛りの先端に濡れそぼつ柔らかな肉が押し当てられた。その熱い肉は、姜維の猛りを咀嚼するように呑み込んでいく。
「あ、んん……」
 の喉が反り上がり、緩い曲線を描いた。
 モスグリーンの襞に遮られ、何が為されているのか姜維からはまるで伺えない。ただ、その下で我を忘れそうなほど狂おしい悦が生じ、姜維を駆り立てるのだけが分かる。
 腕を伸ばし、の腰に手を当てる。どうしたいのか、自分でも良く分からなかった。
 が、姜維の手に己の手を添え、潤んだ目で姜維を見つめる。
「ごめんね……ちょっと、慣らさせ、て、ね……」
 そう言って、は目を閉じた。眉間に皺が寄っている。キツイのかもしれない。
 けれど、そんなの顔は何故か卑猥で、悦に浸っているようにしか見えなかった。
 姜維は無意識にの腰を下ろそうとする。
「だめっ……!」
 の悲鳴と共に、猛った肉棒がずぶりとの中を抉り、途端にきつく締め上げられた。
 傍から見れば、姜維の腰の上にがぺたんと座っているようにも見えるが、モスグリーンの襞の中では互いの陰部が濡れた音を立てて繋がっているはずだった。
 姜維の視線が、自然にそこに向かう。
「……見たい?」
 衝撃から立ち直ったのか、は目に涙を浮かべてはいたが、にっこりと笑って姜維を見つめた。
「いいよ、伯約は、私と姉妹の契りを交わした、可愛い私の妹だもの。……見たい?」
 見たいって、言いなさい。
 甘い艶を含んだ命令は、姜維の脳髄を蕩けさすようだった。
「み……見たい、です」
「ちゃんと、お姉さまって言いなさい」
 が軽く腰を揺する。姜維のものが更に強く締め付けられ、姜維は思わず呻き声を上げた。
「……見たい、です、……お姉さま」
 熱く弾んだ息を制して、やっと言葉を紡ぐ。
 は微笑むと、そっとスカートを摘み上げた。
「…………」
 淡く繁った秘裂に、色濃い肉が呑み込まれている。透明な雫が溢れて、姜維の猛りを淫猥に湿らせていた。ぬるぬると光っていて、目が釘付けになる。
「いやらしい、でしょ……でも、気持ちいい、よね……」
 見ててね、とが小さく呟く。スカートの端を歯で咥え、膝を上げると姜維の腰に手を置いた。
 が腰を上下に振るたび、秘裂の中に張り詰めた肉棒が出入りするのが良く見えた。
 視覚と肉体を襲う快楽に、神経が焼ききれそうになる。
「あ、あうぅ、く……」
 迸る嬌声が、自分のものだとは到底信じられない。けれど、留められずにただ漏れるだけの声は、室の中に響いて姜維自身の鼓膜を震わせていた。
「……ん、可愛い、よ、伯約……もっと、もっと可愛がってあげる……」
 口では到底押さえられなくなって、だがは律儀に手に持ち替えてスカートをめくり上げている。
「あ、も、もう……もう……!」
 姜維は、体の奥が引き連れるような衝動を感じた。出る、と直感して、に訴える。
「いいよ、いっちゃって、伯約」
「あ、しか、し……」
 を置いて一人では、と姜維は耐えた。これほど熱に焼かれているというのに、そんなことを考えられるのが不思議だった。
 が、汗まみれになりながらくすりと笑う。
「イキなさい、伯約」
 命令と共にきゅっと強く締め上げられた。
「…………! …………」
 耐え切れず、射精する。先端から熱いものが噴き出すが、何かに阻まれ滞っている。熱く粘る感触に姜維は眉を顰めるが、震えて締め付けてくる膣に促され、四肢を強張らせて射精を続けた。
 やがて、すべて出し切り、がっくりと力を抜いて横たわる姜維に、は唇をほころばせる。
「伯約、可愛い」
 内心複雑に思いながら、気だるげにを見上げる。
 はゆっくりと腰を上げた。
「っあ……」
 ぴくん、と跳ねる上気した肌が悩ましい。びゅる、と音を立てて勢い良くから抜け落ちた肉棒は、薄い膜に包まれ白濁した精に塗れていた。
 びしょびしょに濡れているそれを、は恥ずかしそうに見つめ、そっと指を伸ばす。薄い膜を用心しながら引き剥がすと、口を縛って散紙に包み、屑入れと思しき箱に押し込んだ。
「……制服、汗臭くなっちゃった」
 着替えてくる、と立ち上がろうとするを、姜維は背後から抱きかかえる。
「ちょっと、伯約」
 怒った振りをするの首筋に唇を寄せる。強く吸い上げると、が悲鳴を上げた。
「駄目、跡つけないで……!」
 姜維は構わず、の耳に唇を寄せる。熱い息を吹き掛けると、の声が可愛らしく漏れた。
 愛しさが募って、姜維はを抱き締めた。
 此処が何処でも構わない、と自分が特別な関係で、は自分を愛してくれている。
 襟首から指を滑らせると、薄布の下に硬い布地の感触がある。それを押し退けると、硬くなったしこりが指先に触れた。
「あっ、ん……」
 甘やかな声が零れ、背がしなる。
「もう一度……」
 上擦った声で強請ると、が姜維を振り返る。
「……お姉さま、でしょ……?」
 は、め、と子供を叱るように険しい目を作るが、すぐに笑み崩れた。
 姜維も、くすくすと笑う。
「……服を脱いでいただけますか、お姉さま」
 けれどやっぱり、セーラー服の脱がせ方は分からなかった。


  終

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