明るい。人の気配もする。
 けれど、周泰は何かに憑かれたように急き込んでいる。
 の首筋に舌を押し付け、時折吸い上げられると、ちゅっと高い音が鳴った。
 じんわりと熱が篭り、そこから煽られるように体が熱くなっていく。
 襟が大きく寛げられる。
 弾かれたように震える乳房に、周泰が吸い付いた。
 腹でも減っているのではないかと思うほど、異様ながっつきようだった。
 無骨なまめの浮いた手が、の乳房を揉みしだく。
 柔々と揉まれ、こねくり回されていく内に、眦に涙が浮いた。
 何をされているのか、丸々見えてしまうのが恥ずかしくてたまらなかった。
 周泰は袖からの腕を抜くと、今度はその指をしゃぶり始めた。爪の間にも舌を這わせる熱心さで、指をくわえ込むと今度は指の股に舌を這わせる。
 くすぐったさに身を竦めるが、周泰は極真面目な顔での指をすべてしゃぶった。
 手首から肘、肩、わき腹と舌で辿られ、は掠れた声を上げる。
 誰かに聞かれるかもしれないという恐怖から、指を噛んで声を殺した。
 周泰の喉がごくりと鳴る。
 胸乳に歯を当てられ、恐怖に駆られた。
――食べられてしまう、私。
 無意識に足が後退り、周泰の前に白い腹が晒される。
 周泰は、へその窪みに舌を突き込んだ。
 そんなことをされるとは予想もしていなかったから、は思わず高い声を上げる。
 ぱっと朱に染まる頬に、周泰は伸び上がって口付けを落とした。
 再び屈みこむと、今度はの裾を割る。足首を捕らえると、有無を言わせず左右に割った。
 人に見せたことのない部分を、こんな明るい室内で晒される。
「……は、恥ずかしいです……!」
 抗議するように訴えると、周泰は却って嬉しそうに更に大きく広げさせる。
 思わず指を伸ばして隠すと、周泰の舌がその指に伸ばされる。
 くすぐったさで浮き上がる指の隙間に、周泰の舌が差し込まれる。
「っあ、だ、駄目、いけません……!」
 指に力を篭めて抑えればまた指を舐め、指が浮けば舌を捻じ込んでくる。
 どうにもできず、は周泰の字を呼んだ。
「……っ、幼平様、お願いですから……」
 止めて欲しさに訴えると、周泰の舌はようやく動きを止めた。
 ほっとするのも束の間、膝立ちした周泰は下穿きを下ろし、そこに在るものを晒す。
 初めて見る異形に、の目が強張った。
「……男のものを見るのは……初めてか……」
 室に入って初めて口を開いた周泰に、は怯えた目を向け、こくこくと頷いた。
 そうか、と小さく頷くと、周泰はの前に腰を押し出す。
 舐めろと言われ、ぎょっとして周泰を見上げる。
 その拍子に先端がの頬を掠め、ぬるりとした粘液が塗りつけられた。
 何だこれは、と慌てて拭うが、塗りつけられたそこが妙に熱く鼓動が激しくなる。
 周泰は、黙したままだ。
 舐めるしかないのか。
 は涙が浮きそうになるのをこらえ、周泰のものを見る。
 見れば見る程、異形だ。
 変に腫れ上がって、生々しい。鼻を突く匂いさえする。
 こんなものを、舐めていいのか。
 不安に駆られて、舌を出すより先に指が伸びる。
 奇妙な形をしたそれにそっと触れると、とても熱くなっているのがわかった。
 表面はふにふにしているのに、ずっしりとしてとても固い。
 今まで触れたことのあるどんなものとも違っていた。
 恐る恐る舌を伸ばし、舌先で突くと、ぶるぶると震える。
 少しだけ、と舌を動かし舐め上げると、周泰が小さな呻き声を上げた。
 周泰が優しげにを見詰め、乱れた髪を掬う。
「……続けてくれ……」
 頷き、舌を蠢かす。
 慣れてくると、その異様さも気にならなくなってきた。周泰の声が鼓膜を刺激し、鼓動が高鳴る。
 気持ちいいんだ、とわかると、もっとしてあげようという気になった。
 思い切って口に咥えると、周泰の体がびくりと跳ねた。
 しゃぶるように舐めていると、口の中で少しずつ形が変わってくるのがわかる。
 息苦しくなってきて、口を外した途端、周泰のものは勢い良く跳ね上がった。
 どういう仕組みの、どんなものなのだろうと繁々と眺める。
 知識はある。男のものなのだということもわかる。
 だが、こんな不思議なものだとは、思いもしなかった。
 指先で突くとぴくぴくと震える。
 周泰が、おもむろにを横たわらせた。また足を開かされたので、舐められるのかと思って押さえようとするが、その手を取られて握り締められる。
 指を絡めて顔の横に置かれ、は自分の体勢に恥じた。まるで腹を見せた蛙のようだ。
「……痛ければ、言え……」
 その言葉に、周泰が挿入しようとしていることを悟り、こくんと頷く。
 最初は少し痛むらしい。
 我慢しなくちゃ、と体に力を篭めると、突然激痛が襲った。
 ずず、ずず、と重い音が体の奥から聞こえてくる。
「い、痛、痛いです、幼平様!」
 暴れようとしても手は周泰に繋がれたままで、足も腿は周泰の脇に挟まれてしまっている。
 周泰が頷くのを見て、止めてくれるのかと思ったが、そうではなかった。
 押し込める速度がわずかに速められ、は小さな悲鳴を上げる。
 痛い、痛い、とうわ言めいた泣き言を繰り返すに、周泰はの眦や皺の寄った眉間に口付けを降らせる。
 ずん、と小さいながらも重く響く衝撃がを襲い、周泰の動きが止まった。
 痛みは治まらないが、少しだけ楽になった。
 ぽろぽろと涙が零れ出し、鼻を啜るとその瞬間痛みが大きくなる。
 周泰が掠れた声を上げた。
 これでようやく終わった、とほっとしていると、周泰が体を起こした。抜いてもらえるのかと微笑を浮かべると、周泰も笑みを浮かべる。
 と、突然周泰が腰を揺らめかす。
 激しい動きではないが、痛みがぶり返しては咄嗟に唇を噛んだ。
 周泰が腰を引いた瞬間は痛みが和らぐが、次の瞬間にはより強く押し込まれ、痛みと衝撃がを襲う。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!」
 声にならない声が噛み締めた唇から漏れてくる。
 痛みが熱さに変わり、涙と汗が入り混じる。
 周泰の息が上がり、また喉がごくりと鳴る。
 食べられてる。
 だから痛いんだ。
 そう思った瞬間、体がふわりと浮き上がった。
 周泰の手が、腰に回った。
「……少し……我慢しろ……」
 呟いた周泰の顔も、体も、汗に塗れている。
 一瞬、周泰も苦しいのかと思ったが、その表情は酷く淫猥だった。
 体の奥がきゅっと縮み上がり、周泰の腰ががくんと砕けた。
 唇を噛み締めた周泰は、の足を肩に抱え上げて、腰を大きく突き込んでくる。
 がくがくと揺す振られて、途切れ途切れに声が漏れた。
 何を言っているのか本人も分からない。衝動的に漏れるだけの、意味も不明な甘ったるい言葉の羅列だった。
 痛みでない痛みがを追い込んでいく。
「……出す……ぞ……っ……」
 二度、強く押し込んだ周泰の体がぴたりと止まり、ぶるりと震える。
 内側に迸る熱を感じて、は背をしならせて悶えた。
 体が強張ったままで固められたかのようで、しばらくの間動けなくなる。
 奔流がすっかり止まると、そこでようやく、周泰は気だるげに手を着いた。
 ぐったりとしたに口付けを落とすと、唇を熱心に舌でなぞる。
 それが済むと、周泰は思い出したように己のものを引き出した。
 ずるずると肉が引き抜かれ、溢れ出す白い粘液が滴り、秘裂を辿って長椅子に落ちる。
 は未だに虚脱したままだ。
 周泰が手巾での秘部を拭ってやっても、体をひくひくと痙攣させるだけでぼんやりとしている。
 その呆けた顔が、周泰にはたまらなく愛しい。
「……帰ってから……今一度……いいな……」
 身を乗り出し、耳元で囁く周泰に、わかっているのかいないのか、はこくりと頷く。
 抱き締められるのを、小さな吐息と甘い声で応えた。

 数刻経って後、は意識を取り戻した。
 起き上がり、身繕いを済ませるとよろよろとしつつ隣室に向かう。
 体が酷く重かった。
 事の最中から意識が途切れ途切れに飛んでいて、最後の辺りは霞の中をさまよう如くだ。
 ここまで酷いことになるとは知らず、は疲憊していた。
 それでも動けるのは、文官として職務に従事していた責任感の賜物であった。意識の底で、ここが周泰の執務室で在り、していいことではないことをして、あまつさえうかうか寝こけていい場所ではないという倫理が働いたのだ。
 周泰は竹簡を読んでいるようだったが、小難しい顔をしている。
 返答を記さねばならないが、どう書いていいか苦慮しているらしい。
「内容を教えてもらえるなら、代筆しますけど」
 素直に頼むと請われ、は周泰の代わりに筆を取った。
「……これが済めば……執務は終わりだ……」
 もう帰れると聞いて、はただ、そうですか、よろしゅうございましたとだけ返した。
 ずっと、それこそ自分の為に身も心も疲弊しきっていたのだろうから、今宵こそゆっくり休んだら良いと思ったのだ。
 周泰はの言葉に嬉しそうに笑っていたのだが、竹簡に目を向けていたは気が付かなかった。

 終

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