は後ろ手に拘束されていた。
牀の上に寝転がされ、怯えたような視線を趙雲に向けてくる。
「何を怯える? 罰して欲しいと望んだのは、、お前の方だろう」
「そう……だけど、でも……」
口は、わざと封じていない。
離れていた長い時間の空虚を埋めるべく、愛おしいと思う思わないに関わらず全てを貪り尽くそうと決めていた。
他ならぬがそう望み、他の男達の手を振り切って趙雲の許に訪れたのである。
問題は、自覚がある程歪んだ愛情表現にこそあるのだが、がそれを知らぬ筈がない。
勝手に決め付け、それをこそ望んだのだろうへの罰を開始する。
胸の双丘を転がすように揉みしだけば、の喉が反って淡く熱の篭もった吐息が漏れる。
相変わらず過敏に反応する体は、趙雲からしても尚、その度合いを深めたように感じられた。
「……久方振りで感じ易いのか、それとも何方かに仕込まれてのことなのか。どちらだ、」
無言を守るに、趙雲は胸の先端で固くしこる朱を強く捻り上げる。
悲鳴を上げて仰け反るの、しかし秘裂は潤いを滲ませている。
「責められて感じるとは、淫乱の極みだな。言え、。何方の手に拠る仕込みなのだ」
「だ、誰って訳じゃ……」
の答えに、趙雲は鼻で笑う。
「言えぬ程多くの男に抱かれたか」
蔑む言葉に、の頬が朱に染まる。
恥辱を与えられ怒ったのかと思いきや、浮かぶ表情はどうもそぐわない。
「……うん」
趙雲でさえ目を剥くの返答に、は言い訳がましく言葉を募る。
「だ、だって、何でかみんな私のことが好きだって……ほ、欲しいって言って、逆らっても全然聞いてくれないし、だから」
「だから好きにさせてやったとでも言うのか」
趙雲の棘を含む問いに、は怯んだように口篭もってしまう。
答えを得られずとも、その内容は既に明らかだった。
趙雲が不機嫌になるのは、何もが他の男に肌を許したことそのものではない。
否、確かにその点に腹立たしくなるのも事実なのだが、一番腹立たしいのはの頼りない意志なのだった。
どうしたいのかはっきりさせず、とりあえず許してしまう心根が我慢できない。
本当に嫌ならそう言えばいいのだが、嫌ではないから文句も言わずなぁなぁに流す。
男なら誰でもいいとまでは言わないが、これと見込んだ相手にはその気になってくれたのが勿怪の幸いとばかりに安易に肌を許すのだ。
数ばかりが増えていくから、本命の限定もしようがない。
子供などはどうでもいい。どうとでもなるからだ。
問題は、がその時どう思いどう動くかの一点のみだった。
蜀に居るならばまだいい。
だが、呉に居る間に身篭って、これは呉の男の種であるから呉の方で引き取らせていただくなどと言うことにでもなれば、情の深いの動きはほぼ決定したも同じと見ている。
世にある情の中で、最も濃いのが母の情だと聞き及ぶ。最も薄いのは男女の情だ。
もそう思うからこそ、趙雲に呉での乱行を告白し、叱ってくれなどと甘ったれた妄言を吐き散らしたに違いない。
心は未だ蜀の臣なのだ。
けれど、そのことすら趙雲には気に食わない。
蜀の臣だからこそ、己を叱り罰し引き止めてくれと趙雲に希ったとするならば、何も相手は趙雲でなくとも良い。馬超でも姜維でも、それこそ諸葛亮でも良い訳だ。
最も気安く頼めるのは趙雲だろうと選ばれたかと思うと、知って尚うかうか引き受ける己の暗愚に腹立たしくなった。
ならばせめて、気の済むようにいたぶってやるのがせめてもの褒美と取るべきだろう。
「舐めろ」
短い命令に、けれどは何を命じられたのかすぐに悟ってしまう。
うろたえながらも何とか身を起こし、牀の脇に立つ裸体の趙雲を見上げる。
その側まで膝で進むと、未だ項垂れている肉に口付けを落とした。
何度も口付けているを見ていると、その頬が次第に染まってくる。目は潤んで趙雲の肉を悩ましく見詰め、物欲しげな唇を割って舌が滑り出てきた。
本当のところ、いったい誰がどのように仕込んだのかと問い詰めたくなる。
蜀を出る頃に既に淫蕩な体と見ていたものが、更に磨かれて戻ってくるとは思いも寄らなかった。
約束どおり帰っては来た。
来たが、この様ではすぐに呉からを返せと高飛車な要求が突き付けられるに違いない。
この女を抱いた男が、並大抵の女で我慢できるとも思えなかった。
啜り上げる舌が、唇が、趙雲が直に教えた動きとは異なる動きを示していた。
上手くなった。
胃の腑の奥から、かっと迸り溢れ出そうとする感情がある。
「ひゃ」
唇を弾いて唐突に反り返った肉に、はよろめき横倒しに倒れる。
その尻を引き寄せ、趙雲は枕元から乱雑に小瓶を取り出し、その尻に宛がう。
「ちょ、え!?」
小瓶の口がの後孔に押し込まれ、微かな痛みを感じたは思わず目を閉じた。
どろりと流し込まれる液体の冷たさに、は大きく身震いしてその目をぱっと見開いた。
「やっ、冷たっ!」
の抗議にも関わらず、趙雲は小瓶の中身を全て流し込むと、いきなり引き抜いて背後に投げ捨てた。
ぱりん、という小さな音が、闇の向こうから響いてくる。
にそれを気遣う余裕はない。すぐさま趙雲の指が突き込まれ、腸に注ぎ込まれた香油を滅茶苦茶に引っかき始めた。
「子龍、やだっ……ねぇ、ちょっと……」
半泣きで訴えるの声も届かぬように、趙雲は指を二本に増やした。
ぐちゅぐちゅと耳障りな音を立てる後孔が、香油の滑りを含んで滑らかに艶めく。
「慣れるのが随分早い。ここも、誰ぞに可愛がってもらったか」
「そんなこと」
指が三本に増やされる。
ごつい、武で鍛えた男の指だ。節くれ立った太い指は、の後孔を刺激して止まない。
頃や良しと納めた指を引き抜くと、多過ぎた香油がごぷっと吐き出される。
泣き出しそうな顔で趙雲を見詰めるに、趙雲は視線を合わせることもなく無言で逸らした。
「子龍、だけだよ。お、お尻なんかにさせるの」
震える声にはっとして顔を上げれば、はもぞもぞと起き出して趙雲に膝を寛げて見せる。
「子龍以外、こんなとこでしたがる人なんか、居ないんだから」
だから、子龍だけは挿れてもいいよ。
小さな呟きに、趙雲は苦笑した。
「それでは、罰にならないだろう」
尻ですら凄まじく感じて喘ぐ癖に、挿れてもいいとは偉そうに。
胸の内では不平を零しつつ、の望むままにその尻を犯した。
「………………」
朝の光に儚く溶けて消えた夢を、趙雲の肉は未練がましく欲していた。
腰の辺りがねとつくのは、間違いなく夢精した証だろう。
が帰ってくる訳がないのだ。
分かっていて尚欲し、欲するあまりに夢を見た。
それでも、新年初の夢は現実の先触れとも聞き及ぶ。
これが先触れならば、汚した下着の処分程度、何と言うことはない。
開き直って起き上がると、来るべき現実に備え、職務に励もうかと言う気になった。
何処が如何とも言い難いが、常とは違う気をまとう趙雲に、劉備はのせいだろうかと密かに考えていた。
終