の帰還に、姜維は喜び踊りだしたい心持ちにさえなった。
呉からの帰還は一時的なものだと分かっていたが、それでもが蜀の地に、姜維の手に届く範囲に居るということは喜ばしかった。
船の出迎えは是非この姜維に、と臆面もなく申し出てしまいそうだ。
とは言え、の帰還を告げての諸葛亮からの呼び出しはその可能性が高いことを示唆していた。
身支度もそこそこに駆け付けた姜維に、衛兵ですら何事やあらんと目を丸くする。
出迎えた諸葛亮は、苦笑して姜維を次の間へと招き入れた。
そこに。
「伯約」
口元をほころばせて立っていたのは、紛れもないその人であった。
あまりのことに度肝を抜かれ、ぽかんと口を開けた姜維に、はくすくすと笑い続けている。
「驚きましたか」
諸葛亮の悠然さが、今は却って恨めしい。
「……驚きました」
素直に申告し、羞恥に頬を染めれば、姜維の視線の外での目が妖しく光った。
捩れのない、真っ直ぐな愛弟子の様子に気を良くしたらしい諸葛亮は、早速に姜維を呼び付けた理由を説明してくれた。
「船が、事の外早く着いたものですから。ですが、素直に船を港に付けると、またぞろ殿が歓待せよと音頭を取りかねませんので、このように」
万事お祭好きなのは、呉に限ったことではない。
だが、の身分では、君主が功績を労うことはあっても直々に歓待するなど持っての外だ。
威厳に関わるということで、をのみ先に招き入れ、船は目立たぬように密かに停留させているのだと言う。
さもありなんと頷き、さてでは自分は何の為に呼び出されたのかと姜維は首を傾げた。
「貴方には、この方を見張っていてもらいたいのですよ。何せ、落ち着きのない方だ。暇にかまけてあちらこちらをうろつかれては、台無しですからね」
落ち着きないと評されたは、幾らか頬を膨らませていたが、心当たりでもあるのか顔を赤くして黙っている。
「殿には食事でも、とお誘いしてご了承いただいております。その席でさりげなく話をいたしますから、私が戻るまでここでの相手をお願いいたします」
長の遠出だったから積もる話もあるでしょうと言い残し、諸葛亮は室を去った。
姜維に否やはないが、待ち焦がれた想い人と突然二人きりにされたことに戸惑いが隠せない。
衛兵をも立ち去らせたようで、人の気配はすっかりなくなってしまった。
「……あ、あの、殿。腹が減ってはおられませぬか? 何か召し上がりますか?」
「……うん、お腹は空いてないけど、ずっと食べたかったものは、あるよ」
ならば、早速に用意させましょう。
脳裏に閃いた言葉は、声にはならず喉元で留まってしまう。
が、姜維の唇を塞いでいた。
艶かしく蠢く舌が、姜維の舌を挑発する。
可笑しなことに、体は固まっても舌だけはに応えて大胆に踊っていた。
「んっ……んふ、んん……」
漏れる吐息が意味のない音と化す。
だが、口中の熱は直接姜維の脳を焼いた。
長い時間、絡めるように重ねていた唇が、外れた。
互いに息を荒げ、触れ合った肉から生じる悦に二人共に浸る。
「……伯約、が、欲しかったよ……ずっと……」
は姜維の手を取ると、裾をたくし上げて秘裂へと導く。
そこは既に濡れ潤っていた。
「う、あ、否……その、殿」
大胆な行動に、しかし姜維はを責める気にはなれない。
逆に、これ程私を求めていてくれたかと、喜びで胸が熱くなった。
「わ、私も。殿。私も、このように」
の手を己の肉棒に導けば、棒の名に恥じぬ硬度を伝えて反り返っている。
姜維の秘部を押し付けられ、は頬を上気させながら微笑んだ。
「……伯約の、私に興奮して、こんなになってくれたんだよね?」
「勿論です」
即答すると、の目は嬉しげに、かつ妖しげに笑った。
「嬉しいよ、伯約。ね、いつかみたいに、口でさせて」
言いながらも姜維の足元にひざまずくに、姜維は心臓が張り裂けそうな程強い鼓動に眩暈していた。
それでも指は、屹立した欲望を露呈させようと慌しくもがく。
露になった姜維の肉に、は一瞬怯んだように顔を仰け反らせ、そっと押し包むように戴いた。
「伯約の……もう、こんな、カチカチ、だね……」
ねっとりと包み込まれると、大声を上げて喚き散らしたくなる。
濃い快楽が視界を塞ぎ、赤黒く染まった脳裏を練り上げていく。
裏筋から亀頭へと舌を這わせられれば、もう堪らずに破裂させてしまいたくなった。
「ん、伯約……もう、出したい?」
唇は外さず、器用に問い掛けてくるに、姜維は情けなく眉尻を引き下げた。
「いいよ、出して」
不甲斐ないと詰られると思いきや、の反応は予想とはまったく違うものだった。
「食べたいものがあるって、言ったでしょ……だから、早く食べさせて……ね……?」
淫猥な唇が、姜維を果てへと追い詰める。
淫蕩な言葉が、姜維の我慢を奪い去った。
「あぁ、出ます、殿! 出します、だっ……!」
の口中で跳ね上がる肉から、ねとつく汁が噴き出される。
けれど、の唇は姜維の肉棒にぴったりと吸い付いて離れようとはせず、溢れる粘液を尽く啜り尽くした。
じゅるじゅると吸い込む耳障りな音に、姜維は羞恥を煽られる。
すべて飲み干してしまうと、はようやく姜維の肉を解放し、口元を拭った。
「姜維……未だ、平気……?」
平気も何も、口元を拭うの仕草ですら姜維を挑発して止まなかった。
既に屹立した肉棒が、新たな悦を求めていきり勃っている。
は微笑むと、姜維を導いて長椅子に腰掛けた。
「諸葛亮様も、分かって時間くれたんだよ。だから、伯約。今夜の私は、貴方のものだからね」
膝を開くと、白い腿と赤く充血した秘裂が姜維の目に飛び込んでくる。
頭の中に血が上り、姜維は全身を戦慄かせた。
「っ!」
餌に飛び付く飢えた獣のように、の体に飛び掛る。
姜維の体重を受け止め、痛みと重みに顔を顰めつつ、それが引くとはうっとりと目を閉じた。
「して、挿れて、犯して、伯約。私の全部を伯約にあげる。だから伯約の全部、私に食べさせて……」
「えぇ、食べさせてあげます。この、いやらしい口で、私のものを根元まで……いいですか、挿れますよ、。奥まで、挿れてしまいますからね……!」
の秘裂に硬く凝った肉を押し付け、姜維は夢にまで見たとの結合を果たした。
「………………」
朝の光に儚く溶けて消えた夢を、姜維の肉は未練がましく欲していた。
腰の辺りがねとつくのは、間違いなく夢精した証だろう。
が帰ってくる訳がないのだ。
分かっていて尚欲し、欲するあまりに夢を見た。
それでも、新年初の夢は現実の先触れとも聞き及ぶ。
これが先触れならば、汚した下着の処分程度、何と言うことはない。
開き直って起き上がると、来るべき現実に備え、職務に励もうかと言う気になった。
躁と鬱とを繰り返す姜維に、諸葛亮は密かに意味ありげな笑みを含むのだった。
終