差し出された赤地の袋には、赤に緑のラインのついたリボンが巻かれている。
 戸惑いながら袋とを見比べている甘寧を、は不思議に思った。
「何? 別に変なものじゃないよ?」
 甘寧が欲しがっていた皮のグローブだ。バイク乗りの甘寧は、この酷寒の時期に厚手のグローブを愛用していたが、それが遂に擦り切れて穴が開いてしまったと嘆いていた。愛車の新しい部品を買うのを優先した為、そのボログローブを未だ使っているのをは知っていた。
 袋が大きいのは、ついでに店員に勧められたインナーグローブとやらも入れたからだと思われる。彼氏にプレゼントということで、その店員が張り切って包装してくれたのだ。奮発して結構いい値段のものを買った効果もあるかもしれない。
「……俺、何も買ってねぇ」
「何だ、そんなこと」
 甘寧が忙しく外を飛び回っていたのを知っていたし、朝は早朝出社、夜は遅くまで残業でと話をする暇もなかった。休日は疲れてぐったりしていたから、は甘寧の部屋には来るもののDVDを見たり出前のピザを食べるぐらいで、デートとはおこがましくも言えない。
 プレゼントがないと言って怒るぐらいなら、そもそも甘寧とは付き合ってなかっただろう。万事その手の行事には疎いというか興味がない。誕生日だと言えばおめでとうぐらいは言うが、幾つになったのいい年だの、ろくでもないことを付け足して寄越す。
 デリカシーと言うものがないのだ。それこそ一細胞分もないと確信があった。
 だから、今更それぐらいでがたがた言うほど初心でもない。甘寧が気にしているようなのが逆に意外なくらいだ。
「つか、お前ぇは俺に色々貢いで寄越すだろ、だから今年はって思ってたんだよな」
「貢いじゃないわよ」
 甘寧はの言葉に耳も貸さずに『ああ失敗した』と繰り返し喚いている。
「何なら今からデパートにでも行く?」
「金ない」
 じゃあいつまでもウダウダ言うな。
 口にはしなかったが、は呆れて甘寧に背を向けた。来る途中で借りたDVDをセットする。
「……お前ぇ、何でいつもこーゆーグロイの借りてくんだよ」
「うるさいな、嫌なら自分で借りてきなさいよ」
 自分でレンタルDVDを借りる金もない甘寧は、黙って毛布にくるまっている。
 好きなものに金をかける主義の甘寧の部屋は、狭い割に夏暑く冬寒い。特に師走で貧乏極まった甘寧は、の部屋に来るガソリン代も惜しむという貧乏っぷりなのだった。
「ケーキとケンタ買ってきたから。食べる?」
「お前ぇ、それ見ながら鳥食う気か。おっそろしい女だな」
 気にもしないくせにわざと怖がって見せる甘寧に、が拳固の一発もかますかと振り向いた時だった。
「……何してんの」
「ん?」
 甘寧は下をずり下ろし、何が楽しくてそうしているかはわからないが、が渡したプレゼントのリボンを自分のナニに結び付けているところだった。
「金ねぇから、金かかんないプレゼントをな」
「……世の風俗業界に喧嘩売るような言動だわねぇ」
 呆れたが冷たい目を向けるのも構わず、甘寧はをベッドの中に引きずり込んだ。
「まだ昼間」
「DVDついてるし、わかんねぇだろ」
 隠しもせずに置かれていたローションを手に取ると、甘寧はのスカートをまくってショーツを下ろす。
「着たまま?」
「寒いだろ」
 冷たくぬるつくローションが、の秘部にぬるぬると塗りつけられる。スカートはまくってあるから構いはしないが、シーツが濡れるのはいいのだろうか。
 どうせ洗うのはいつもなのだが。
 熱い昂ぶりが侵入してきて、は一瞬で雑念を吹き飛ばされる。
「……あっ?」
 甘寧のものに結ばれたリボンが、しょわしょわと擦られる音を立てる。柔らかいものに撫で摩られる感触がむず痒いような感触をもたらした。
 常よりも反応のいいに、甘寧が意外そうに目を剥いた。
「お? コレ、意外にいけるのか?」
 何がだ。
 突っ込みたくてももう声が出ない。ノってきた甘寧に翻弄されて、は艶めいた声を上げた。
 DVDから女の悲鳴が立て続けに上がる。甘寧の言う通り、これなら近所にばれる心配はなかろう。
 それを見越して借りてきている自分が、少し情けない。
「どした?」
 甘寧が覗き込んでくるのが鬱陶しい。
「……いいから、早く」
 プレゼントなのだろうと暗に詰ると、甘寧はにっこり笑って腰を強く突き入れてきた。
「すげえ、気持ちいいな……愛してるぜ、
 ああ、惚れた弱みってどうしようもないなぁ。
 嘘臭いなと思いつつ、掠れた色っぽい声にうっとりしてしまう。
 せめてと思って噛み締めた唇は、甘寧の指にあっさりとこじ開けられてしまった。

  終

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