――張角様の御髪って、どうなってるんだろう…。
は常の疑問を浮かべて、こっそり小首を傾げた。
無双5になってからというもの、張角の髪型の激変ぶりは凄まじい。
まるでフラワーロックのように顔の周りを逆立つ髪と髭が取り巻いている。思わずまじまじと凝視してしまいたくなる髪型だった。
だが、疑問に思っているのはどうやらのみらしく、皆が張角の形を見て不思議そうにしている様など、ちらとも見掛けたことがない。
あるいは、が気付かないだけで、本当は皆不思議に思っていたのかもしれないが、そんなことを確認することも出来ない。
実際、も自分が不信心だからなのではないかと疑問に思って居る程だ。
真の信者だったら(言い方はおかしいが)、あるいは疑問に思うことはないかもしれない。
新年を迎えるに辺り、心浮き立つのかいつもの粛々とした空気は薄い。
ここぞとばかりにチラ見の回数も増えていった。
しかし、やはり自身も何処か浮かれてしまっていたようで、気を付けていたつもりだったにも関わらず張角と視線が合ってしまう。
はっとして逸らしたのが、却ってまずかったのかもしれない。
無言で手招きされて、はうろたえた。
うろたえたところで何をどうすることも出来ないから、仕方なく張角の元へ進み出る。
周囲の側近達は、すわ何事かと色めき立ったが、張角が柔らかく微笑み手を振ると、かしこまって散って行った。
「ご、御用でしょうか、張角様」
おずおずと口を開くと、張角はを傍らに座らせた。
「そなたこそ、我に何事か告げたいことがあろう」
あ、とは顔を赤くする。
さすが張角様だ、私の考えることなんか、とっくにお見通しなんだとひれ伏したくなった。
黙り込むに、張角はからからと笑ってその手を引き寄せた。
「同志よ、恐れることはない。我は汝らと共に進む者。蒼天の獣共とは異なる存在。申してみよ」
言えと言われて、はいそれではと言えることでもない。
は困惑しつつ、どうしようかと悩んだ。
沈黙を守り続けるに、張角は大きく頷くと、の手を取り奥へと導く。
「同志よ。ならば、言葉など使う必要はない。すべて我に任せるが良い」
は、やはり張角様は凄い、口を聞かなくても私の心を読み取る術をお持ちなのだと素直に感激した。
――張角様の御髪って、どうなってるんだろう…。
相も変わらず疑問に陥る髪型の謎を、は結局解けずじまいだった。
張角は優しく『教えて』くれはしたが、それはの疑問に答えるものではなかったのだ。
代わりに、は張角の『妻』として迎えられていた。