三日ばかり多忙を極め、睡眠もろくに取れずにいた呂蒙は、精も根も尽き果てつつあった。
は、呂蒙のまとめた書簡にそれぞれ封をしてくれていた。
「呂蒙殿の顔、綺麗ですよね」
突然口を開いて出たのはそんな言葉だった。
「……嫌味ならば、一眠りした後で幾らでも聞いてやる」
だから今は勘弁してくれと、呂蒙は重い瞼を手で温めた。
薄い暗闇に包まれる。
唇に、何かもっと暖かいものが触れた。
何だと思う間もなく離れていった柔らかな感触に、呂蒙が恐る恐る手を退けると、が笑って立っていた。
鈍い思考がゆっくりと状況判断をしていくが、それが終わる前にはさっさと離れていた。
「この書簡、届けてきますね」
遠ざかる背中をただ見詰めていると、その背中はくるりと反転した。
「嫌味ではなく、本当に綺麗だと思ったんですよ。働いている男の人の、綺麗な顔をしています」
また背中が現れ、扉に遮られて見えなくなるまで、呂蒙はただ黙って見詰めていた。
の頬が赤く見えたのは、疲れた目のせいだったろうか。
考えても思考はまとまらず、とにかく休もうと呂蒙は席を立った。
隣室に備えられた簡易の牀に寝そべったが、しかし体の疲労に反してまったく寝付けなかった。
呂蒙に付き合い意識が飛びかけるほど疲れていたとは言え、とんでもないことを仕出かした自分には自己嫌悪していた。呂蒙が忘れてくれないかと思ったが、そう上手くいくものでもないだろう。
恥ずかしくて壁に額をくっつけると、急速冷却されて、しゅうっと音がするような気がした。
終