もうずっと、ずいぶん長いこと我慢させられている。
 達ってしまいたくて、その苦痛から涙が零れる。
 懇願は何度もした。言葉でも、態度でも、もう限界だと何度も訴えた。
 けれど、冷たい言葉が返ってくるだけだった。
「ならぬ。続けよ」
 固く膨れ上がった肉は、これ以上なく大きくなっての中を擦り上げている。滴り落ちた愛液で茂みまでしっとりと濡らしているというのに、まだ達ってはいけないと命じられる。
「……もう、もう駄目です……お願い……します、から……」
「ならぬ」
 這うようにして腰を上下させている。もう体の力が入らないからだ。
 上に乗せられて、自分が達くまで達ってはならぬと命じられ、既にどれほどの時間が経っているのだろう。
 自分で達かぬのなら、次の女に行けばいい。控えの間に、別の妾が体を火照らせて待っているはずだ。
 の声は小さくない。よがり声は悲鳴のように大きく、そこがいいと寵愛を受けていた。
「……孟徳さ、ま……!」
 妾は自分一人ではない。この覇王に仕える妾は、五十を下らないだろう。
 誰もが曹孟徳の寵愛を待ち望み、呼び出される日を待ち焦がれているはずだ。
 自分は、もういい。もう限界だ。
 限界を超えて与えられる悦はただ苦しみを増すばかりだ。
 自ら胸乳を揉みしだき、後ほんの少し手を伸ばせば届くだろう頂点に焦れる。
「……よし、達けい」
 許しを得て、は歓喜に満ちた笑みを浮かべた。大きく腰を揺らし、深く飲み込む。
「あ、あっ、あぁ、んっ……!」
 膣壁がきゅんと引き締まり、中に収められた肉を絞り上げる。
 余韻が全身を駆け巡り、は体を震わせて堪能した。
 曹操の肉は、未だ剛健を保ったままだ。
「…………ご無礼を……失礼、いたします……」
 荒い息を整える間もなく、次の妾に代わろうと昂ぶりを引き抜く。
 抜け落ちそうな腰で牀から降りようとすると、曹操が腕を引きそのまま倒された。
 何を、と問い掛ける間もない。
 肩口を膝で押さえつけられ、目の前に曹操の猛りを向けられる。
 曹操は自らの手で扱くと、の顔目掛けて昂ぶりを放出した。
 びしゃり、と音が響き、生臭い匂いがを襲う。短い悲鳴を上げて開いた口に、まだ固さの残る肉が押し込められた。
「飲め」
 命じられ、絶対服従を刷り込まれた体は反射的に曹操の言葉に従う。
 じゅる、ちゅると音を立てて飲み込む。生臭いのに、不思議と吐き気は覚えなかった。ただ、こんなことをしていいのかという恐れがある。他の妾にも申し訳なかったし、精は回春の特効薬と聞く。覇王のそれをこんな風にいただいて良いのかと思った。
 すべて啜ると、曹操は満足そうにを見下ろした。
「今一度だ。儂のものを、勃たせよ」
「ですが」
 口答えをするに、曹操は不機嫌そうに眉を顰めた。
「曹操様が常若を保たれる為には、私達の精をこそ吸っていただかねばなりません。一人目の私にこのようなことをなされては」
 漏らさず、吸う。これが基本だ。
 ところが、曹操はふん、と鼻息一つでの言葉を拒絶した。そのままに圧し掛かり、その足首を掴み大きく広げる。
「何時かは死ぬ。最近になってそれがようやくわかった」
「そんな!」
 は絶句して曹操を見詰めたが、曹操は言った言葉に反して実に愉快そうに笑った。
「儂は今宵、飽きるほどお前を犯したい、それだけよ」
 何をするでなく勢いを取り戻した曹操の肉は、飢えたような勢いでの中へと突き込まれる。
「ひ、あぁっ!」
 過敏になった膣壁が曹操のものに抉られ、に甘美な悲鳴を上げさせる。
 曹操は静かに笑った。
「好き哉」
 ただ堪えるよりも、この声を聞いていた方が余程良い。
 ただの声を聞き続けたいが為、曹操はを苛み弄び続けた。

  終

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