紫陽花が綺麗に色付いているのを、は熱心に眺めていた。
 そのを、姜維が熱心に見ている。
「綺麗だね、伯約」
「はい、とても綺麗です」
 会話の実はすれ違っているが、聞いている分には何の違和感もない。
 がずれに気が付く様子もなく、また姜維も真面目に答えているので何ともならない。
 それはともかく、は姜維が花好きだと勘違いしたまま、いつもの調子でウンチクを垂れる。
「紫陽花ってね、本当はこの真ん中の小さなのが花で、その周りで色付いているのががくなの」
「がく」
 聞きなれない言葉に、姜維が聞き返してくる。
「花をね、守っている部分のことだよ」
「花を」
 瞬間、姜維の中には自分とが連想された。
 という花を守る、がくの自分。
 思わず笑みが零れた。
「では、殿はこの花で、私はこのがくですね!」
 この、と花の部分を指し、次のこの、でがくを指差す。
「……うん……?」
 気の利いたことが言えたと満面笑みの姜維は、が複雑そうな顔をしているのに気が付けないでいた。
――私は地味ってことかな……?
 確かに美人という顔でもないけど、伯約に言われると何か堪えるなぁ。
 苦笑いのに違和感を感じ、姜維は笑みを打ち消した。
 けれど、考えてもの不興に理由を見出せず、おろおろとうろたえるのだった。

  終

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