+++百年の恋をも冷めさせてほしい
夏侯淵は、焦っていた。
どうにも止まらない。
良くないのは分かっている。実際、明日も仕事なのだからこれ以上はまずい。
けれど、汗に塗れた肢体が息を荒げているのを見るだけで、たわわな胸が弾むように揺れているのを見るだけで、夏侯淵の理性は粉々に打ち砕かれてしまう。
俺の九天断だって、こうはいかんぜ、あぁ畜生。
埒もないことを喚きながら(無論胸の中でだが)、夏侯淵の指はそろりとへ伸びていく。
相当疲れ、鈍くなったであろうは、しかしびくんと感度良く震えた。
「や、駄目、駄目です、もう……」
疲労困憊の態を見せるは、身をよじって拒絶する。
しかし、夏侯淵にはそんなの身動ぎさえが、己を誘惑する誘いの手に見えて仕方がない。
「……駄目ってか?」
すっと伸ばした指は、閉じられた足を器用に割って滑り込む。
濡れているのは感じているからと言うよりも、何度も放ったせいだろう。
ぐちゃぐちゃと音を立てると、の眉が苦しげに寄せられる。
よがってるのと苦しがってるのと、どうしてこうも似たような顔になるんだろうなぁ。
さっぱりわかんね、と敢えてお気楽に考えながら、秘肉が奏す淫猥な音に耳を傾ける。
「……っ、あぁ、もう、もう駄目、ホントに駄目ぇっ!」
堪えていたが突然喚き、己を掻き乱す夏侯淵の手を取り押さえる。
ぎく、と表情を強張らせた夏侯淵に気が付かなかったようで、は夏侯淵に縋り付く。
「駄目、もう、指じゃ駄目、妙才様のでして、妙才様の、××××でして!」
既に滾っている夏侯淵の肉に、は唇を寄せて舌を這わせる。
ひちゃひちゃと、今度は自分の方から淫猥な音が奏され始めた。
キリ、ねぇなぁ。
どうしても絶ち難い悦楽の環に囚われ、うんざりと、且つうっとりと行為に浸る。
熱心に取り組んでいるの尻が、いい具合に突き出されていた。
「…………」
ふとした悪戯心で、夏侯淵は濡れた指でその秘窟を穿つ。
「きゃっ!?」
驚きから飛び上がったを取り押さえ、夏侯淵は初めて触れる秘窟探索にのめりこみ始めた。
「な、ちょ……や、何してんですか、妙才様っ!?」
「うーん、ちっと、なぁ」
「ちっとじゃありません、ちっとじゃ……あ、やだ、そこは駄目ですってば!」
浅いながらも指を挿入し始めた夏侯淵に、の声が苦しげに、涙混じりに転じていく。
「や、あ、あ……き、汚い、からぁ……!」
かなり嫌がっている、と感じつつ、夏侯淵は己を止められなくなった。
汚ぇ汚ぇって言うけど、なぁ。
浅く穿っているせいか、それ程汚いとも思えない。
むしろ、この程度で幾らかでも醒めるなら、今後の、特に明日の執務の為にはいいと思えるのだ。
――百年の恋をも冷めさせてほしい。
なんつって、な。
態のいい言い訳と薄々察しながら、夏侯淵は次第に指の挿入を深くする。
「……あ、あぐ、ぐ……ぎ……」
嬌声が、色気のない声に転じていく。
それさえ、普段と違った興奮を夏侯淵に与えるのみだった。
「。挿れてみて、いいか?」
ずいぶんほぐれたと確信した夏侯淵は、指を抜きつつお気軽に訊ねる。
訊かれたの方は、泣きそうな顔をしつつも、黙って尻を掲げて寄越す。
「お、気前がいいなぁ、」
「……だっ、て、妙才様の……凄く、元気になっちゃって……」
の言う通り、下っ腹の肉に食い込む勢いで反り上がる肉槍は、夏侯淵の興奮の度合いをそのまま指し示していた。
「……汚いって、嫌いになったり、しないで下さいね」
ぽつりと呟くに、夏侯淵は沈黙する。
突然押し黙ってしまった夏侯淵を、いぶかしく思ったが振り返る。
「馬鹿野郎っ!」
「ひ」
怒鳴りつけられ、身をすくませたは、唐突に腰を掴まれ引き摺り上げられる。
「……ンな可愛いこと言いやがって、止まんなく、なっちまっ、たーっ!」
緩めたとは言え初めて男を迎える部分に、勢い良く突きこまれる。
内臓を下から持ち上げられる感触に、は嘔吐を必死に堪えた。
「、すげぇ、すげぇここ締まるぞ、……!」
夢中で腰を進める夏侯淵は、普段の陽気で優しげな声はすっかり鳴りを潜め、女を貪る男の性を剥き出しにしていた。
こんな夏侯淵を知っているのは、恐らく魏の中でも自分だけに違いない。
の中で膨れ上がった優越感が、痛みを快楽へとすり替える。
「……ぁ、何、か、き、気持ち、よく……」
の声が聞こえたのか聞こえないのか、夏侯淵は荒い息を吐きながら、に囁き掛ける。
「動くぜ、」
蠕動を始める夏侯淵の肉に、は我を忘れて溺れていった。
強烈な悦に半ば魂を抜かれたが、気怠げに牀に転がっている。
前も後ろも『処女』を失い、白濁した精に塗れた腿は、乾き始めて厭らしい粘りを帯びつつあった。
「冷めねーなぁ」
困惑する夏侯淵の股間では、隆々とした逸物がを睨め付けていた。
性欲に直結する感情を如何にして宥めるべきか、夏侯淵は苦悩する。
終