あれから一年と言う月日が流れた。
は一旦直営店舗の所属となり、今月再びTEAM呉の本陣に異動となることが決まった。
移動先の店舗で経費の実に18%削減という結果を叩き出し、返り咲きに関して誰にも文句を言わせないだけの成果を上げたのだ。
張遼との関係はずっと続いていた。
そして今日、張遼との結婚式を挙げることになっている。
これでいいのだろうか。
付き人も居ない控え室に一人、私は鏡の中の自分に問い掛けた。
真っ白な、シンプルで美しいウェディングドレスを纏った姿は、まるで赤の他人のようだった。
唇だけがやたらと赤くて、花嫁と言う初々しい響きとは真逆に卑猥で淫蕩な色艶をかもし出しているように見える。
甘寧と別れ、私の体は変化した。
元に戻ったというべきだろうか。
抱かれても、ほとんど濡れなくなっていた。感度も鈍い。
煮えたぎるようないかがわしい熱を感じなくなった。肌を合わせれば快楽はあったけれど、緩やかな心地よさだけで、あの突き上げるような空恐ろしい快楽は感じなくなっていたのだ。
やはり私は甘寧が好きで、甘寧に恋していた気持ちが私の体を女に仕立てていたのだろうか、などとつまらないことを考えた。
張遼は、昔の男のように私を捨てなかった。
プライドを傷つけられているだろうに、穏やかにそれでいて熱く見詰めてくる目に何ら変わりはな
かった。
温かな皮膚の感触にまどろむ私を、ではそのまま眠られるといいと言って添い寝してくれたこともある。
申し訳なさから逆ギレしてヒスを起こした時でさえ、彼は私の暴慢を黙って受け止めてくれた。
けれど何故か、籍を抜き、別れるのだけは頑として承知してくれなかった。
私は彼の妻であり、それが彼の支えなのだと切々と説かれた。
家事も炊事も彼の方が数段上手い。
私の価値とは何だろうと、よく思い悩んだものだ。
彼自身に直接問い掛けると、私のすべてが価値だなどと、とんでもない甘言を吐いた。
私の目も、髪も、唇も、指も手の平も腕も足も胸も首も肩も腹も背も腰も尻も、すべてが彼にとっての生き甲斐なのだとしゃあしゃあと言ってのけた。
私の姿を見、私の声を聞き、私の温度を感じる。
それだけで幸せなのだと、何かにつけ張遼は話してくれた。私の不安を感じ取っていたのかもしれない。
少し焦げたグラタンを、恥ずかしそうに差し出して、次はもっと上手く作るから、と言う私が好きだという。
ソファで転寝をしているのを咎められ、寝惚け眼を擦っている私が好きだという。
仕事で失敗したのを、愚痴も言わずに不貞腐れて涙目になっている私が好きだという。
理屈でなく好きなのだと何度も言って聞かされた。
どうしてそんなに私が好きになれるのだろう。
それも、報われることなどほとんどないはずなのに。
式を挙げたいと言う彼の申し出に、だから私は逆らえなかったのかもしれない。
流されては駄目だともがいていたのに、また流されてしまっている。
私はだから、一生懸命流されていない振りをした。
式場選びに躍起になってみせたり、ブーケのデザインに凝ってみたり、リングピローを徹夜で作ってみたりした。
そうすることで免罪符を手に入れようとしているみたいだった。
張遼のことは嫌いではない。
こんなに私を愛してくれたのは、甘寧を入れてもたぶん張遼が一番だと思う。
何より、感じない女を感じさせようと努力してくれる。
その努力を恩着せがましく誇ることもない。
張遼の無表情は、きっととてつもなく優しい彼が、自分を守る為の手段の一つなのだろう。
彼を愛したかった。彼に優しくしたかった。彼の想いに応え、彼に報いたかった。
けれど、ふと気がつくと私は考えてしまっている。
これでいいのだろうか、と。
は控え室で迎えを待っている。
控えめにしたい、というの意向を汲み、式そのものは二人だけで行うことになったが、披露宴の方はそうはいかなかった。やりたくないというのわがままも、今回ばかりは却下された。
何と言っても、TEAM魏とTEAM呉、それぞれの君主の覚えもめでたい二人の披露宴である。式は仕方ない、と渋々(本当に渋々だった)譲歩してもらったものの、披露宴だけはそうはいかん、と二人の君主がノリノリで仕切り始めたのがそもそもの混乱の始まりだった。
そうせざるを得ないという配慮もある。の本陣返り咲きに関係したことだった。
別れた甘寧とを同じ職場に置くには、一年と言う月日はあまりに短かった。
甘寧はさばさばとしたものだったが、内心はどうかわからんというのが呂蒙の見解であり、は万事細かいことに気を配るタイプだから、甘寧や皆に気遣っていらぬストレスを抱え込むのではないかというのが陸遜の見解だった。
確かに有り得ると孫堅が頷き、そんならこんなのはどうだと孫策がアイデアを出し、二人の披露宴をTEAM呉でプロデュースし、二人を祝福することでわだかまりを吹き飛ばそうということになったのだ。
まさか魏でも似たようなことを考えて(こちらは主に張遼の心配だったようだが)、同じようにプロ
デュースを進めているとは夢にも思わない。
わずか2ヶ月前にダブルブッキングが発覚し、てんやわんやの騒動となった。
驚かせようと当人達に秘密で事を進めていたのが却って仇になったのだ。
好意が一転して迷惑になったと知るや、二人の君主は素早く『会談』を行い、微調整をした。
その微調整と言うのが、TEAM同士の競合だったのである。
つまり、新郎側の招待客をTEAM呉が、新婦側の招待客をTEAM魏がもてなしのプランニングをしようというのだ。
会場を二つに区切り、仕切れるところはすべて各TEAMで仕切り、そうでない部分は合同会議で打ち合わせる。
とは言っても、仲違いとまではいかずとも元々仲の良いTEAM同士ではない。加えて、の異動の件で揉めに揉めた経歴もあり、二つのTEAMの争いは『披露宴』と言うお題を与えられたことで激化した。
披露宴の会場取りから始まって、装飾、演出、提供される食事や酒の質、お色直しのドレスに至るまで費用を厭わぬ勝負が繰り広げられた。
誰が払うんだと喚くに、張遼は私が、とずれた返答をしての怒りに油を注いだ。
結局、社のウェディングプランのモデルケースとすることでかなりの額を浮かせられたのだが、それがなければ借金生活を免れなかったに違いない。
さておき、ただでさえ当日のトラブルに事欠かないのが結婚式と言うものである。
披露宴云々の前に、式を執り行う教会の牧師が未だ着かないというハプニングが生じていた。
牧師の親族が急な事故があったとかで、幸い軽傷だったのですぐ戻るつもりだったそうだが、今度は当人が車のラッシュに巻き込まれて身動きが取れなくなってしまったそうだ。
披露宴までは時間にかなり余裕があったので問題はなかったし、ひっそりと隠れるようにして建てられた教会は穴場中の穴場とかで、他に式の予定もなく静かなものだ。
電話を掛けに行っていた張遼が戻ってきた。
「すまぬが、どうしても来てもらいたいと呼び出しを受けてしまった。3〜40分程で戻る、それまで一人で居られるだろうか?」
準備期間が通常より極端に短かった披露宴の件で、張遼はよく呼び出しを受けていた。またその関係らしい。
本当に仕方ない、と笑って、は張遼を送り出した。
もう少し一人で居たい気分だったせいもある。
椅子に腰掛け、窓の外をぼんやりと見やった。
背後のドアが開く気配があり、忘れ物かと振り返った視線の先に甘寧が立っていた。
には状況が理解できない。
どうして、と問おうとした唇は、音を発することはなかった。
甘寧はドアに鍵を掛けると、大股に部屋を横切り、今度は窓のカーテンを勢いよく引いた。
それだけで、この小さな控え室は密室になった。
振り返った甘寧は、薄闇に包まれて見知らぬ他人のようだ。
目だけがぎらついてを射抜いていた。
怖い、と思った瞬間、甘寧の腕がを捕らえていた。
その手の甲に、薄っすらと残る白い線を見た。
「許してくれたんじゃなかったの」
それは、が甘寧に付けてしまった傷のはずだ。
包帯を巻いたまま甘寧はを抱いた。だからなかなか塞がらなくて、白い包帯にじんわりと血が滲む様をは忘れていない。夢を見ていたと思っていたが、甘寧に会いに行ったあの日、甘寧の手に巻かれた包帯が夢ではなかったと証明していた。
結局別れてしまったけれど、まったく顔を合わせなかったというわけではない。地方の店舗に配属になったわけではないし、忘年会やら合同会議やらで二三度は顔を合わせた。
それほど長く話し込んだことはなかったが、甘寧は苦笑いしつつもに話しかけてきてくれた。
元気か。
最初の一言はいつもそれで、が元気だと答えるとそっか、と微かに笑う。
笑ってくれる。
それだけで、は涙が滲みそうになるのを堪えた。
自分なんかより、もっと相応しい良い人が甘寧を待っている。自分は甘寧に相応しくなかったのだと思った。
今度こそ本当に諦め切れたと思ったのだ。
その甘寧が、何をしようとしているのかあからさまな態度に出してに被さってきている。
悪い夢でも見ているような気がした。
の顔が強張ってる。
俺は、見ない振りをするように固く目を閉じた。
の唇は塗られた口紅のせいかぬるっとしていて、とてつもなく甘かった。
俺は股間が疼くのをすぐに察した。
久しぶりだった。
ずっとこうしたくてたまらなかった女が、プレゼント用の包装をされたみたいな格好で俺の前に居る。
たまらなかった。
胸の膨らみに手をやると、柔らかいしっとりとした絹の感触が心地よく、それ以上に漏れた吐息の熱さに理性が吹っ飛びそうになった。
忘れたことなどなかった。
許すも許さないもない、とこうすることだけが俺の生き甲斐みたいな気がしていた。
の体がびくびくと震えている。
何も感じない体になっていたというのはホントの話なんだろうか。信じられなかった。
緩く膨らんだ裾をまくり上げ、中に潜り込む。
むっとするような甘い匂いに、頭がぼーっとしそうだった。
白のレースのガーターベルトと白いストッキング、半透明のレースが細かくついてるショーツが目に飛び込んでくる。
あの日の、黒いガーターベルトを思い出した。
ショーツの上から舌を這わせると、もう濡れていた。
俺は一度スカートの中から這い出して、裾をの手に持たせた。
汚したくなければ持ってろ、と言うと、は泣きそうな目をして俺を見詰める。
けど、おとなしく裾を手に取り、高々と捲り上げた。
の下半身が剥きだしになる。
目の毒になりそうな、卑猥な眺めだった。
汚してしまってはさすがにまずい、可哀想だが立たせたままで俺はのショーツを下ろし、舌での愛撫を再開させた。
舐めとっても舐めとっても、後から滲み出る愛液が俺の口元を汚していく。
変わらないように思えた。
本当に不感症だったんだろうか。
俺が相手なら、ひょっとしてはずっとこんななのではないか、などと考えかけ、んなワケねぇかと自嘲した。
は、少し普通とは違う女なのだ。
肩にかけたバックからバイブを取り出すと、の中に埋め込んでやった。
スイッチを入れ、手で挿入を繰り返してやると、の声が一瞬高く上がる。イッたらしい。
俺はの足を開かせながら、ドレスが汚れないようにしゃがませると、今度は俺が立ち上がっての口に俺のものを含ませた。
汚さねぇように気ぃつけろよ、と声を掛けると、の顔に怯えが走る。
けど、その目の奥が何処か悦んでいるのを俺は見てしまった。
あぁ、やっぱりな。
の赤い口が、俺のものを深く飲み込む。
赤い口紅が、肉棒に赤いラインを残した。
その表情に恍惚が浮き上がる。頭の中がおかしくなりそうだった。
コイツを一年も我慢してたのが信じられない。
すぐにイきそうになって、に合図を送ると、の舌が俺の亀頭に絡み付いてくる。
競り上がってくるものが爆発するように弾けたが、は口の端から零すこともなくすべて飲み干した。
張遼は教会のベンチに腰掛け、磔にされた救世主の像を見上げていた。
その唇には穏やかな笑みが掃かれている。
慈悲の笑みだと信者は言うが、張遼には死への安堵のように見える。
捉え方は様々だろうが、張遼の見方を知れば信者は怒り狂うかもしれない。少なくとも、あまりいい気はしないに違いない。
だから張遼は無駄口を聞かないようにしている。言ってわからないものを無理に理解させる必要はないと思っているのだ。
自分がわかっていればいい。
自分でそうだと定めたことを、他人に理解してもらおうとは思わなかった。
張遼一人きりの教会に、誰かが入ってきた。
かったるそうに肩を揺すって現れたのは、甘寧だった。
「すげぇ、濡れまくってたぜ」
「抱いたのか?」
あんな格好の女、抱けるかよと甘寧は口を尖らせた。
「脱がしていいってんなら別だけどな。まあ、突っ込みたくなかったっつったら嘘になるけどよ」
三回イッたな、俺のもの咥えながらも一回イッたし、と甘寧は指を折って数えた。
張遼が部屋を出てから、三十分ほどしか経っていない。
「……あんた、ホントにいいのかよ」
「何がだ」
甘寧の表情が歪む。
張遼にも、甘寧が言いたいことはわからないでもない。
二人初めて顔を突き合わせたあの夜、二人ともを諦められないと悟った。
欠ける意思は微塵もない。ならば、永遠にこの歪んだ関係を続けなければならない。
誘いかけたのは張遼の方だった。
甘寧は最初、張遼の申し出に反発した。そんなことができるか、と頑として言い張った。
張遼は、籍を抜く気は決してないことを告げた上で、の密かな性情を言葉に表した。
異常な状態の性交でしか満足を得られない、一種のマゾヒスト。
だから前の男とは上手くいかなかった。
だから甘寧と張遼の手の中であれほどよがり狂うことが出来た。
それを知ってなお、を諦められないなら手を貸せと張遼は静かに告げた。
『私は諦めきれぬ。お前は如何だ』
甘寧は、ぽかんとして張遼を見詰めた。否定の言葉を紡ごうとしたらしい唇は、だが何も言葉を発せずに閉じられた。
思い当たる節があったのだろう。
そんなはずがねぇ、と呟いた甘寧は、足早に立ち去ろうとして張遼に止められた。
ならば試せ。私も試す。
張遼の言葉に、甘寧は否を唱えることが出来なかった。
名刺を渡され、使わねぇぞと吐き捨てた甘寧から連絡があったのは、が甘寧の家を訪れただろうその日の内だった。
以来、二人は密かに連絡を取り合っている。
「おかしいよな、こんな関係。おかしい、あんたもそう思ってんだろ」
甘寧の目は複雑な感情をそのまま映している。
素直な男なのだろうと張遼は感じていた。
「おかしいかもしれんな」
甘寧は顔を上げて張遼を見詰める。情けなさそうな顔だった。
「だが、世間がどう思おうが私には関係ない。世間は世間、私は私だ。私は、が幸せならそれでいい」
幸せなのか、と甘寧が問い返す。
こんな関係が、にとって本当に幸せなのか。
張遼は目を閉じた。それは、以外には決してわからないことだ。
けれど。
「満たされず怯え惑うよりは、満たされる瞬間があった上で怯え惑う方がマシだと、私は思う」
それは張遼の考えだった。が何を望んでいるかは知らない。ただ、何も望んでおられぬやもしれぬ、何となくではあったが張遼はそう感じていた。
に望みはない。ただ、流され生きていくだけでいいひとなのに、それを良しとできずにいる。
矛盾した、哀れなひとなのだ。
甘寧と入れ替わりに去っていく張遼の背を、甘寧は複雑な目で見詰め続けた。
は、私の登場に少し驚き怯んでいるようだった。
化粧を直していたらしい、先程まで綺麗に片付けられていたテーブルの上に、化粧道具が広げられていた。
もうしばらくで牧師も来るらしいからと告げると、は緊張した面持ちで頷いた。
緊張しているのかと問うと、一度横に振りかけた首を縦に振った。
背後から抱き寄せ、立ち上がらせると、私はにドレスの裾を持たせた。
顔が強張るのを素知らぬ振りでやり過ごし、ショーツを下ろすと指を忍ばせた。
残滓でない粘液が私の指を濡らすのを、私はとても心地よく感じた。ここまで濡れたのは久し振りだ。
指をゆっくりとかき回すと、の睫が艶っぽく震える。
あまりに良い反応に、一人でしてでもいたのかと囁くと、の頬が真っ赤に染まった。うろたえる様が思いの外可愛らしく、私のものも反応してしまう。
勃起したことを告げると、の頬はますます赤くなった。
挿れたいと告げると、はうろたえ、小さく口で、と囁いた。
それでは我慢ができない。
どうせドレスは式が終わった後に脱ぐのだ。披露宴では違うドレスを着ることになっている。の選んだドレスでは、両君主は納得しなかったのだ。ちょうどおあつらえ向きではないか。
牧師一人をやり過ごせば良いのだからと、私はを壁の傍に立たせ、手をつかせた。下半身に纏っていたものを取り去ると、の腰を引き寄せた。
腿にまで垂れている愛液を掬い取って指で擦ると、もその気になってきたらしい。尻が揺れ、振り返る目が潤んで私にせがんでいた。
わざとゆっくり沈ませていくと、は尻を突き出して自ら私のものを飲み込もうと秘部をひくつかせた。
ちらちらと垣間見える表情は、はっきりとは見えなかったがとても心地よさげで、満たされて幸せそうだった。
貴女が幸せならば、私はそれで良いのだ。
求めに応じて一気に奥まで腰を進めると、の中が戦慄いて私を歓待する。
ぬるぬるとした肉襞が私のものを絞り込み、私の与える刺激を焦がれて待っているのがわかった。
のドレスのファスナーを下ろすと、は驚いたように振り返った。
ビスチェをずらし、胸乳を引きずり出すと、尖端を弄る。
可愛らしい嬌声と共に、一度着飾ったドレスを乱される嫌悪を露にした表情にそそられた。
後で直すのを手伝う故、と耳に囁くと、膣の中がうねって私を責めてくる。
止められないとわかっていて、止めようかと問うと、は私をきつく睨めつけた。
どうしたいかと問うと、恥ずかしげに震える声が、早く、と私を急かす。
私は口元に笑みが浮かぶのを自覚した。
が愛しくて仕方がなかった。
誰に何を言われようと、私はを愛していたし、これが私なりの愛し方だった。
溢れる愛液が私のものを濡らして滑りを良くしてくれる。
私の与える快楽を感受するの姿に、私はこの一年の空虚が充足していくのを感じていた。
いつかは、私とあの男の間で取り交わされた協定が露呈する日が来るかもしれない。
その時、はどれほどまでに傷つき、どれほど悦に溺れるのだろうか。
楽しみでもあり、怖くもあった。
けれど、何が起ころうと私はを離さないだろう。
同時に達して、深い溜息を吐く。
脳髄を焼くような快楽に、眩暈がした。
「……いつもと違うのが、良かったのだろうか」
からかうような張遼の言葉に、は顔を赤らめた。
化粧用にと持参したティッシュが、瞬く間に半分に減ってしまった。
拭ってくれる張遼の指が、戯れにの肉芽をくすぐる。
奥からじんわりと濡れてくる感触に、は張遼に文句をつけた。
「式が終わったら、今一度」
披露宴会場から迎えが来たらどうするのだとが身支度しながらぶつぶつ言い募るが、待たせておけば良いと張遼は平気なものだ。
「新婚旅行から戻ってすぐ、二週間の出張を命じられている。多少のわがままは融通してもらわねば」
その言葉に、の胸が跳ねる。
張遼は穏やかな優しい目でを見詰めた。
「心細ければ、誰かを呼んでもいい」
何か、知っているのだろうか。
は不安になって張遼の顔を伺うが、張遼は軽く首を傾げてを見詰め返すのみだった。
牧師の妻が、大変遅くなってと恐縮しながらやって来た。
ようやく牧師が戻ってきたので、教会に来て欲しいということだった。
張遼は、急ぎ化粧を整えるの最後の点検役をかって出た。
二人の男の精を戴いたせいか、は酷く艶やかで美しかった。
満足げに微笑みかけ、の腕を取ると、張遼は控え室を後にした。
これから、共に添い遂げる誓いを立てにいく。
終
Extra1 →