を室の前まで送ってくれた星彩は、扉の前まで来て言いにくそうに俯いた。
 それとなく察したは、笑みを浮かべて大きく扉を開いた。
「今日は、私と一緒に寝ようか。星彩の準備が終わってれば、だけど」
「終わっています」
 ならば、何も問題はなかった。

 寝る前に茶を淹れ、酔い覚ましを兼ねて喉の渇きを癒した。
 それが済むと二人は牀に移動し、夜着に着替えて横たわる。
 同衾の作法としては頭と足を互い違いにして眠るのが筋らしいが、そんな堅苦しいものではなく、単に名残を惜しんでの添い寝だったから二人は枕を並べるようにして牀に着く。
 蜀から持ち込んだ上掛けの上から、更に呉で用意してくれた上掛けを被る。互いの体温もあってか、温もりは眠気を誘うに十分だった。
 小さく欠伸をしただったが、ふと気がついて閉じかけた目をこじ開ける。
 星彩が、熱の篭った目でを見詰めていた。
 この美しい少女が、自分に対していわゆる邪な想いを抱いているのはとうにわかっている。ただ、実際の行動に正しい知識が伴っていないから、笑い話にしかなっていないのが現状だ。だから、今日もこうして隣に寝かせているのだ。
 ホントに、そうなのかなぁ。
 眠気に襲われたせいか、割合に冷静には考えていた。
 自分がこういうことにルーズなのは、もうとっくに自覚している。複数の男に肌を許し、時には二人を同時に相手にしたこともある。決して無理矢理ということでもなかった。
 本当なら見向きもされないはずの、引く手数多な男達が自分を抱きたがるという優越感も多大にあったと思う。『ゲームの中のキャラクター』という、現実味のない事実がそれに拍車をかけていたのだろうことも薄々察していた。
 一年近く居るにも関わらず、にとってこの世界は未だ仮想世界に過ぎないのだ。
 皆が皆、必死に、一途に生きていることは肌で感じる。だからといってこれが長いリアルな夢ではないとも言い切れず、はいつか自分が目を覚ましたら、腐女子としての緩い日常が待っているような気がしてならなかった。
 それに、何だかんだ言って、は他人の熱が嫌ではない。むしろ、かなり好きだと思う。
 同性相手にどうかと思うが、それでも星彩が相手であれば嫌とは感じなかった。
 手を伸ばして星彩の胸に触れれば、張りと柔らかさを微妙なバランスで兼ね備えた乳房がたわむ。ふにふにとした独特の感触は、男の体にはどこにもないものだ。揉んでいる内に段々と心地良くなって頭がぼーっとしてきた。
 星彩の吐息が、熱く悩ましく零れる。
「……お姉さま……私……お姉さまに、私の初めてを……」
「無理」
 沈黙が落ちる。
 その間も、半ば寝惚けたようには星彩の乳房を弄り続ける。
「……どうしてですか」
 の顔と手を見比べながら、星彩は複雑な面持ちで問い掛けた。
「張形、ない」
 ふにふにふにふに。
「……あ、あんなものをいったい何処にやってしまったんです」
「……どっか」
 まさか周泰に引っこ抜かれて捨てられたとは言えないから、は適当に答えた。星彩は、手だけは熱心に乳房を弄り続けるに困惑を禁じ得ない。
「ないと、駄目なものなのですか。私、初めてはお姉さまとしたい」
「なくてもたぶん大丈夫だけど、勿体ないから」
 ふにふにふにふに。
「勿体ない……ですか……?」
「初めてが指じゃ、勿体ないでしょ」
 男にとっては初めての女は面倒だとも聞くが、これと見込んだ女なら話は別だろうし、まして星彩のような美少女であればその付加価値は計り知れない。
「付加価値ですか……?」
 星彩の困惑はますます深まるばかりだ。
 実際の話、この時点ではかなり寝惚けており、その言葉を一々真に受けたら馬鹿を見るわけだが、真面目一方の星彩にそれがわかるはずもない。
 脈絡のないの言葉に耳を傾け、懸命に理解しようと考えていた。
「初めては、好きな男の人とした方がいいよ」
「男の人でないと、駄目なのですか」
 ふにふにふにふに。
「自前で張形持ってるじゃん」
「……そ……そうかもしれません……けど……」
 布地の上から揉むのに飽きたのか、の手が星彩の夜着の襟元から滑り込み直接揉み始めた。
 ぴくんと跳ねる肌に、はうむうむと頷いた。
「星彩、感度もいいし、やっぱ勿体ない。好きな男の人とかいないの。子龍とか」
「趙雲殿は、尊敬する……武の師ではあります……が……好きなのは……私が好きなのは……あっ……」
 星彩が話し続けているにも関わらず、は星彩の胸の飾りが勃ち上がったのを弄り始めた。思わず言葉が途切れるが、は促すでもなく指の腹で撫で回す。
「困ったな」
「あっ……何、が、です……」
 びくびくと肌が跳ね、短い問い掛けも困難になってきた星彩に、は眉を寄せた。
「やっぱり、あんま嫌じゃないなぁと思って」
「……いや、って……あっ、ん……」
 星彩の尻が震え、太腿をもじもじと磨り合わせる。更なる刺激を求め、体が準備を始めたのだ。同じ作りの体だからこそわかる。同人誌のホモ描写でも同じようなことを描いたが、実際にも当てはまるもんだとは感心すらしていた。
 もう引っ込みも付かなくなっている頃だろう。秘裂に潤いが満ち、含んだ熱が神経を焼いているはずだ。
―――まぁ、いっか。
 初めての話でもないし、とは気楽に星彩の夜着の裾を割る。星彩の肌に鳥肌が浮いた。
「あ、お姉、さま……?」
 星彩の目に、無理ではなかったのかと疑問が浮かんでいた。
 は苦笑しつつ、秘裂に指を滑らせる。陰毛の強い毛が音を立てたが、その奥には溢れ出すほどの蜜が滾っていた。
 ひちゃひちゃと濡れた音を立てると、星彩の顔が何かに耐えるように強張る。禁忌を犯している興奮が、の気質を苛む者のそれへと変化させる。
「こうされると、気持ちいいでしょ? 何だか、後ろめたい気にならない? ん?」
 耳元で囁くと、星彩の頬の朱が色を濃くした。
「だからね、こういうことをするのを、秘め事って言うんだよ。あんまりおおっぴらにしちゃいけないことなの。それにね」
 濡れた奥にある窪みに、指の先端をほんの少し押し込む。
「いっ……」
 歯を噛み締め、涙を浮かべる星彩に、は諭すように話しかける。
「痛いでしょ。無闇にできるもんじゃないの。ホントに好きな人とだけにしないと、ここも痛いし心も痛くなっちゃうよ」
「お、お姉さまは……?」
 星彩の問い掛けに、はふと自分の処女喪失の件を思い出す。
 あ、やべ。
 半ば強姦だったことを思い出し、あまりに特殊ケースで通常に当てはまらない自分の体験をどう話していいか、悩んでいる内に徐々に眠気も飛び始めていた。
 寝惚けていたから大胆になれた訳で、それが醒めれば自分の仕出かしていることの空恐ろしさに顔が青くなる。
「……お姉さま?」
 止まってしまった指に、星彩も悦に霞んだ目を薄っすらと開けた。
「……あ、う……な、何でもない……」
 今更後にもひけず、恐る恐る指を動かすと艶やかな声が上がる。鮮明なエロ動画を見ているような気に陥った。
 指をわずかに閃かせ、撫で摩るだけで愛液が溢れての指を濡らし、敷布を掴んで悦を耐える星彩の姿は、男ならずとも生唾を飲み込む色気があった。
「……気持ち、いい、星彩……?」
「はいっ、はい、お姉さま……!」
 上擦った声は切羽詰っていて、星彩の感じている悦が本物だと知らしめている。処女だからこその感度の凄まじさに、は一度眠気の醒めた頭が今度は熱でぼうっと霞むのを感じた。
「お姉さま?」
 指はそのままに星彩の上に覆い被さり、襟元を広げて乳房に舌を這わせる。星彩の啜り泣く声が鼓膜を震わせた。嫌悪ではなく、狂おしい悦に苛まれての歓喜の声だった。
「あ、あぁ、お姉さま、わ、私、何かおかしいです……何か……」
 体が細かに震えて、肌は充血して赤く染まっている。忍ばせた指の先に、引き締まる筋の動きを感じた。
「イきそうなの、星彩?」
「え、い、いく?」
 達く、という言葉も知らないのか。
 純粋培養にも程があると思いつつ、それもまた星彩らしいとは感じた。指先に少し力を篭めてかき回す。
「やっ、あっ、お姉さま、そんなにしないで!」
 星彩の足が敷布を掻き分ける。しゅっ、という甲高い音に、は却って力を得、筋に沿って強く擦り上げた。
「駄目、お姉さま、やめて! お、おかしくなります、私、おかしく……」
「星彩」
 初めて知る悦の深さに怯える星彩の名を、優しく呼ぶ。
 激しい悦に溺れかけた星彩が、ふっと気を緩めた瞬間だった。
「達きなさい」
 止まっていた指が突如激しく星彩を掻き乱し、高い水音を立てた。
 崖っぷちで踏みとどまっていた星彩を深い悦に叩き落し、ゆっくりと沈んでいく様をは全身で感じていた。

 僅かな間ではあったが、失神していた星彩が目を覚ました時、はまだ自分の中に燻る熱を持て余していた。
 それでも星彩が目を覚ましたと知ると、優しく、また少し恥ずかしそうに笑みを浮かべた。
「大丈夫?」
 体がまだ痺れたようになっていたが、星彩はこくりと頷いた。
「こんな風になるんですね……驚きました……」
 疲れ切った声だったが、何処かうっとりとした響きがある。
「前も同じようなこと言ってたね」
 がそう言って笑うと、星彩はわずかに頬を染めた。
「この間より、ずっと凄かったので……」
 星彩の言葉に、これは喜ぶべきか悲しむべきかと悩む。男だったら嬉しいのだろうが、は生憎女だったし、相手が星彩だったからしただけで本来別にその気はないのだ。
 苦笑して、さて寝るかと上掛けに潜り込むと、背中からするりと抱き込まれる。
「……星彩?」
「はい」
 柔々と胸を揉む手が、襟元から忍び込んでくる。
「いや、はいじゃなくて」
「はい?」
 裾を割ろうとする指を押さえ、うろたえつつも背後を伺う。
「何してんの」
 の問い掛けに、星彩は極上の笑みを以って応えた。
「今度は、お姉さまの番です」
「……いや、いいです」
 きょとんとした星彩の顔に、は無邪気の邪気を感じた。を『イかせる』のが当たり前だと思っている。一番理解させたいことをどう理解させたらいいのかわからず、とにかく星彩の手を剥がそうと身を捩った。
 それが良くなかった。
 星彩はの動きを利用し、いとも簡単にの秘裂を暴いてしまった。もっとも、それまでに潤い過ぎるほど潤っていた箇所が指の動きを助けてしまったせいもある。
 星彩の指が触れた途端、の腰が大きく跳ね上がった。
「お姉さま、凄い。びしょびしょです」
 これ全部、本当にお小水ではないのですか。
 星彩の言葉は率直過ぎて、の羞恥心を真っ向から煽る。恥ずかしさから、またしとどに溢れ出す愛液に泣きたくなった。
「……お姉さまは、もう痛くないんですよね?」
 膣に忍び込んでくる指を、思わず締め上げてしまう。強烈な締め上げに、星彩は痛みすら覚えた。だが、同時に上がる艶やかな声が星彩を後押しする。
「だ、駄目、星彩、そこは駄目っ……」
 が懇願しても、星彩はにこにこと笑っているだけだ。
「わかっています、お姉さま。ちゃんと、上手にいたしますから」
 ゆっくり、優しく指が蠢く。今さっき自分がしたことを忠実に学び再現しようとする星彩は、言葉通り『上手』にを追い詰め始めた。
 よくよく考えてみれば、武の師と限定されてはいたがあの趙雲の愛弟子なのだ。飲み込みの早さもさることながら、その気質もひょっとしたら似通っているのかもしれない。
「駄目、駄目だったら、星彩、お願いだから」
 逃げを打つのを逆に利用され、四つん這いに這っている恥ずかしい体勢にさせられてしまった。露になった秘裂に星彩の指が突きこまれ、前後に揺するたびに粘っこい音を立てる。
 星彩の目が、淫蕩に揺らいだ。
「……私が男だったら、もっとお姉さまを喜ばせてあげられるのに」
 耳元に囁かれ口付けられると、の肘ががくんと折れた。不思議そうにを見下ろした星彩は、何かに気がついたようにの耳元に唇を寄せた。
 ふ、と息を吹き込まれただけで、の体はぴくぴくと震え膣は星彩の指を締め上げる。
 宝物を探す無邪気な子供のように次々と弱いところを探し当てる星彩の手管に、は悲鳴を上げ翻弄され続けた。

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