湯浴みが終わると、大喬はつんけんしながらも外で待機している孫策を呼びに向かった。
 未だ怒り醒めやらぬといった態だが、それとこれとは別と割り切っているのだろう。
 否、割り切る、という頭もなく、何の疑念も躊躇もなく向かったように思う。
 大喬のそんな素直さは、希少なものだ。もしであれば、なんだかんだと言い訳して愚図愚図するか、最悪別の機会にと無理やり予定を無期延期にさせたやもしれない。
 しばらくして戻って来た大喬の後ろには、いつもと同じ緊張感のない孫策がへらへらしながら着いて来る。
 大喬の表情から怒りが消え失せているのを見ると、孫策が上手く丸めこんだ、もとい何とか大喬の怒りを解くのに成功したのだろう。
 元々、惚れ合っている夫婦だ。
 それが、どうしてという異物を混ぜ込むことに何の抵抗も見せないのか、正直なところ不思議ではある。むしろ、の方が余程容易く取り込まれそうで、自分に対してどうしようもない違和感があるくらいだ。
 二人は、そんなの微妙な心根に気付く様子もなく、あれやこれやと支度に掛かっている。
 大してすることもなさそうなものだが、真面目な顔をして手をゆすぐ孫策や、幾つか集めて来たらしい燭台の中から手頃そうなものを熱心に選んでいる大喬の姿に、は何となく気後れしてしまい、無駄口一つ叩けない。
「じゃ、始めっか」
 言うなり孫策に小脇に抱えられ、室の奥へと運ばれる。
 いつも思うが、現代人では考え難い腕力である。
 大人が幼児を抱えるにしても、ここまでひょいひょいと持ちあげられないものだろう。人間の体というのは持ち上げ難いように出来ているらしいし、皮脂等のせいもあって滑りやすい筈だ。
 孫策に限らずのことで、これが武将だからなのか男だからなのか、通常の付き合いに関してはほとほと経験の浅いには分かりかねる。
 事実を確認するに、試しに大喬に持ち上げてもらうのが一番早そうだが、大喬にまでひょいひょい持ち上げられたら意味もなく落ち込みそうだ。
 ちらりと大喬を見ると、素早く気付いてにこりと微笑まれる。
 大丈夫ですよ、と励まされているのだろうか、如何にも細やかな気遣い上手の大喬らしい。
 ばたばたして忘れてしまいそうになったが、これからはあまり人様にお見せしない部分を御開帳させられるのだ。
 そうだった、と思い出すと、途端緊張に体が強張る。
 相手が医者であってもなかなか気の緩む話ではない。
 孫策のように半ば無理やりの方が、も自身に言い訳が出来て良い、とも言えるやもしれない。
 の緊張を感じ取ったか、孫策がちらりとに目を遣る。
 小脇に抱えるという乱雑な扱いの割には、下ろす時には静かにそっと下ろしてくれた。
 人一人で寝るには、ずいぶん広い牀である。
 今回のような目的で使うにはいいが、いつもこんなに広い牀で寝ているのだろうか。
 牀の真ん中で座り込んだは、手持無沙汰に敷布に爪を立てつつ、落ち着かなさから他愛もない思索に耽る。
 寂しくないだろうかと大喬を見ると、大喬は少し考え込むような仕草を見せ、不意に踵を返す。
 戻って来た大喬の手には、白く長い布が掲げられていた。
「見えていると、緊張してしまうのではありませんか?」
 目隠ししたらどうかということらしい。
 一旦は断ろうと思ったが、悩んだ挙句に結局受け取る。
 婦人科では、局部を見られていることを隠す為にカーテンを引くし、確かに見られているのを見るのも嫌なものだ。
 目隠ししようと頭の後ろに手を回すと、大喬がさり気なく受け取り、代わりに結んでくれた。
 自分でやった場合の数倍は綺麗に、しっかり結んでもらったおかげで、締め付けられる感じもなく痛みもない。
「有難う」
 が礼を言うと、返事こそなかったが傍らで柔らかく微笑む気配がした。
 緊張もやや解れて、胆が据わる。
「……早く、終わらせてよ」
 唇を噛みながら、おずおずと膝を割る。
 前方からやはり声もなく笑っている気配を感じる。
 大喬が笑った時は全然気にならなかったのに、孫策が笑うと無性に腹立たしくなる。
 何が違うんだろうかと考えを逸らしながら、しぶとくくっ付けていた膝を、ゆるゆると離した。
 水気を含んだ肌が、ひんやりとした空気に晒される。
 下着は前もって着けてない。
 冷えて、体温が一気に奪われていく感覚に、は鳥肌を立てた。
「もう少し……」
 呟きと同時に膝に手が掛かる。
 見えないが故に突然のことに思えて、はびくりと跳ね上がる。
「あ、悪ぃ」
 孫策も、見えないの気持ちを覚ってか、ぱっと手を離して詫びてくる。
 謝られることではないような気もするが、たかがこれだけのことで一瞬でも驚き竦んでしまった自分もばつが悪く、は不貞腐れた風を装って唇を尖らせながら、こくりと小さく頷く。
 また孫策が笑う気配を感じた。
「何」
 むっとして問い掛けると、肩に暖かなものが触れる。
 大喬が背後に回り、肩を押さえてくれているらしい。寄り掛かるものがない故の心遣いだろう。
 飴と鞭、という言葉が脳裏をよぎる。
「触るぞ」
 あまり大きく足を開かせるのも可哀想だと思われたのか、それなり開いたところで孫策が声を掛けてくる。
 秘裂に近い部分に孫策の指の気配を感じて、は軽く唇を噛んだ。。
 前置きされれば驚くことはないが、それでも多少の緊張を招くのは仕方なかろう。
 短く息を吸って、吐いて、覚悟を決める。
 頷くとすぐ、過敏な箇所に無骨な指先が触れて来た。
「…………」
 ゆっくりと、驚かさないように触れてくれるのは良いが、その気遣い分だけぞわぞわする。
 閉じた肉を左右に押し分けられて、隠された内奥が晒されるのが、やけに鋭く感じられた。
 心臓の音がやけに大きく聞こえる。
「……ん、見た感じは特に……」
 え、と驚きの声が背後から上がるのと同時に、柔らかな内腿に強い感触の髪が触れる。
 指で押し広げられた肉の内側に、生温く濡れたものが差し込まれた。
「そ、孫策様っ!?」
 動揺して声を上擦らせる大喬以上に、は驚愕して声も出せずに居た。
 孫策は、一度顔を上げて大喬を見上げる(ようには感じた)。
「痒いのってな、もっと奥、なんだろ? じゃ、濡らさねぇと。な?」
 それで説明は足りたとばかりに、孫策は再度の股間に顔を伏せる。
 ひちゃひちゃと音を立てて舐められ、は体を捩った。
 体を逃がそうとしてのことだが、まったく意味を成さない。
 背中を支えてくれていた筈の大喬の手が肩をがっちりと抑え付け、が逃げるのを許さなかった。
「あっ、あ、あぁっ、や……」
 足が跳ね上がるのを邪魔に思われたか、すぐに足首を捉えられて牀に押し付けられる。
 浮き上がる腰は、無意識ながら孫策の動きを手助けする形となって、沸き上がる快楽を更に濃いものへと煮詰めていった。
「や、駄目……駄目って、言って……!」
 辛うじて残された理性を駆使して叱咤するのだが、孫策は元より大喬までもがを自由にする気配がない。
 執拗に朱玉に舌を這わされ、の意識が点滅を始める。
「は、……やだ、も……も……!」
 背中側に居るのは、大喬だ。
 だが、の理性が醜態を免れようと抗うのを嘲笑するかのように、凄まじいまでの羞恥はを責め立てる悦楽と化していた。
 大喬は声もなく、黙っての痴態を見下ろしている。
 どんな風に思われているだろうと考えると、無性に泣きたくなって、けれど体は熱くなるばかりだ。
 羞恥の熱を昇天の熱と誤解でもしたのか、の秘裂からは蜜が滴り溢れている。
 自身でもそれと分かる程、後孔にまで滴り落ちる淫液に、はますます羞恥を煽られた。
「もう、いいでしょ、もう……ねぇ!」
 最早啜り泣きに近い叫び声に、孫策はようやく顔を上げた。
「ひっ!」
 間髪入れず突き込まれる節くれ立った指に、は悲鳴を押さえられない。
 背後から、息を呑む気配と生唾を飲み込む音が鮮明に響く。
「……ん……届か、ね……」
「んっ、んっ!!」
 挿れられたのは指一本らしいが、ぐりぐりと押し込まれては身を縮込める。
 内壁を弄るように擦られ、体ががくがく揺れた。
「……孫策様……だ、大姐が」
 か細く揺れる声が、を案じて漏らされる。
 が、戸惑う声とは裏腹に、を押さえる手から力が抜けることはなかった。
「大丈夫だぜ、大喬。は、ちょっとばかし感じ過ぎるからな」
 無理をしている風でなく明るく嘯く孫策に、は一瞬殺意を混ぜ込んだ怒りを覚える。
 しかし、それも本当に一瞬だった。
「……そ、孫策様っ……」
 焦ったような大喬の声と共に、潤んだ秘裂によく馴染んだ感触のものが押し当てられた。
 固いような柔らかいような、途方もない熱を帯びたそれは、が止める間もなく内部に押し入って来る。
「あ、あ……入っ、入って、く……」
 当のではなく、大喬が呟いた。
 大喬の呟き通り、孫策の肉は潤んだの中へずぶずぶと沈んでいく。
 根元近くまで埋め込んだ辺りで、孫策は深く細い息を長々と吐き出した。
「……ん……と、変わり、ねぇ、な……ん、否、ちょっと……だいぶ、キツイ、かもっ……」
 孫策の肌に汗が浮き上がるのが、密着した肌から伝わって来る。
 昨夜の薬の効能もあるのか、は、微々たる刺激にも恐ろしいくらいに反応してしまうことに恐怖を覚えた。
 このまま、大喬にすべてを見せる羽目になるのか。
 しかし、大喬を気遣いたくともその余裕はまったくなく、は半ば明滅して消え掛ける意識を辛うじて保つのが精一杯になっている。
「……大姐……苦しい、ですか……?」
 最早限界に近い、と投げ出し掛けた意識が、大喬の声に引き摺り戻される。
 詫びでも釈明でも、とにかく応えなければと戦慄く唇を開くを先して、孫策が答えてしまった。
「苦しんじゃねぇよ、気持ちよくて、おかしくなりそうなんだよな、な、?」
 あまりな言葉に、は呆然とし、遮二無二喚き散らしたい衝動に駆られる。
 だが、串刺しにされた今の状態では、いつものように怒鳴り散らすことも敵わない。
 その上、が喚こうと腹に力を込めることが孫策を刺激することに直結するらしく、孫策の艶を含んだ呻き声が耳元に吹き込まれる。
「そ、孫策様、く……苦しいんです、か?」
 泣きべそを掻いているような大喬の声に、は心底情けなくなった。
 昼に『恐い』と胸の内を漏らされたばかりだと言うのに、その大喬に対して更に間近で醜態を晒す孫策の意図が理解できない。
 片足が解放され、その足を戒めていた手が近くに伸びてくるのが分かる。
 その手は、ではなく大喬に差し伸べられた。
「苦しかねぇ……すっげぇ気持ち良くて、うっかり腰振りそうになんの我慢してんだ……大喬、お前、に色々聞いてるんじゃなかったのか?」
 大喬は答えない。
 ただ、背中に密着された大喬の体から、強く早い鼓動が伝わって来る。
「……試しに、してみるか?」
「え」
 大喬の鼓動が、一段と大きく跳ね上がったような気がした。
 どんどん早くなる鼓動を、は自分の心臓の音のように錯覚しそうになる。
「ちゃんとじゃなくってよ、真似ごとで、してみるか? 挿れないで、な?」
 孫策の口調は優しい。
 けれど、その声音には抑え難い欲望が秘められていた。
 視覚を塞がれているが故に、にはそれが良く分かる。
 孫策は、との濡れ場を目の当たりにして興奮する大喬の熱を感じ取り、欲望を刺激されたのだろう。
 じわっと滲む感情がある。
 馬鹿げたことに、見紛うことなき嫉妬の念だ。
 自分と繋がりながら大喬に欲情する孫策に、どす黒い怒りを抱いている。
 熾した炭のように、内側に赤々と燃え滾る熱を宿す感情に、は身の置き所のなさを感じた。
「…………っ!!」
 突然、大きく揺さ振られた。
 孫策が突き上げてきたのだ。
 緩慢に、しかし大きく腰を揺す振られ、膣壁を擦り上げられる。
「……、いいよな、?」
 愕然として、問い掛けの意味を考え込んでしまう。
 が答えない間にも、孫策は腰の動きを止めずに居る。
「いいよな、。な、いいよな?」
 堪え切れない快楽が迸る。
 溢れそうになる声を押さえようと手首の上を噛むが、孫策に無理やり外されてしまった。
「お前、大喬に教えてやってんだろ? な、だから、な?」
「大姐」
 孫策の愉悦に満ちた声に被さって、大喬の震える声が耳元に囁かれる。
「……駄目、ですか……?」
 駄目、とは言えない。
 いいよ、とも、決して言えない。
 は、唇を噛んだ。
「うっあっ」
 孫策が呻き、の上に崩れ落ち掛かる。
 矢庭に膝を立て、自ら腰を大きく振ったに責められ、孫策は目が眩むような鋭い快楽に打ちのめされた。
 持ち直し、唖然として目を上げると、まるで目隠しの白布を引き立たせるように真っ赤になったの顔が、孫策の目に飛び込む。
 思わず笑みが零れた。
「大喬」
 孫策の指が大喬を誘う。
 大喬は、不安そうにと孫策を見比べていたが、の背をそっと横たえると、おずおずと立ち上がり孫策の傍らに向かう。
 しがみ付いて来た大喬に軽い口付けを落とし、を跨ぐようにして立たせると、孫策は大喬の裾を割った。
 露になった下着は、既にその役を成さない程に濡れそぼっている。
 孫策が下着の脇に手を掛けると、大喬は大きく体を震わせた。
 なだめるように小さな尻を撫で、ゆっくりと下着をずらす。
 秘裂が見えるか見えないかのところで止めると、孫策は舌を伸ばし、静かに秘裂に這わせた。
「あっ!!」
 大喬の体が震え、掴まった孫策の肩を揺らす。
 振動は、繋がったの体にも響き、微細な快楽を生んだ。
「あっ、あっ、孫策様、そ、孫策様ぁっ……」
 啜り泣くような声を上げて、繰り返し孫策の名を呼ぶ。
 溢れる快楽と未知の経験に怯える大喬を、孫策はその腿や腰を優しく撫でて慰める。
「……大喬、の方向いて、腰、落とせ」
 身を反す際に脱ぎ掛けの下着を一気に下ろし、裾をからげてその下半身を露にする。
 羞恥に身悶えながらも、与えられる快楽の大きさ故に大喬は孫策の言いなりだった。
「……んっ……!」
 強く締め上げていた肉が引き抜かれ、は小さく呻く。
 熱を帯びた痴丘の上に、愛液をたっぷり含んで重みを増したかのような肉がどちゃりと置かれ、その上に大喬がしゃがみ込む。
 肉と肉の間に肉が挟まれた形だ。
「動くぞ」
 熱を帯びた吐息と共に、孫策は高らかに宣言する。
 と、挟まれていた肉がずりずりと引き抜かれ、また押し込まれる。
「…………っ!!」
 大喬は、声もない。
 感じているのが苦痛でも嫌悪でもないことは、吐息のみでも分かった。
 濡れて更に敏感になった肉が、雄の肉に擦られて、それだけで途方もない快楽を生むのだろう。
 は、飛ぶ程強くはないじりじりとした悦に、戸惑いを隠せない。
 さっきまで凝った肉に突かれて強い刺激を感じていたのだから、当然と言えば言えた。
「大、姐……!」
「あっ」
 いきなり、両の胸が鷲掴みにされる。
 滑らかな肌の質感は、紛れもなく大喬の手だと物語っていた。
 柔らかい肉の塊を捏ね繰り回され、その先端を潰される。
 と思えば、いきなり食まれ、舌で突かれ転がされた。
「ちょ、ちょ……だ、大喬、殿……!?」
 視界は相変わらず塞がれている。
 だから、本当に大喬の仕業とは確認できない。
 けれど、角度や体の重なり具合から言って、大喬の仕業でないとはどうしても言えなかった。
 ぺちゃぺちゃと音を立てて舐められ、ちゅっと強く吸われる。
 状況の更なる異常化が、の理性をぐちゃぐちゃに掻き乱した。
 膝裏を抱え上げられ、肉の密着度がぐんと上がる。
 擦り上げられる刺激の強さ、溢れる愛液の粘りは互いに増して肌を泡立て、挟まれた肉が凝って脈を打つ。
 おかしくなる、と酸素を求めて大きく開いた口に、べちゃりと温かく湿ったものが被さった。
「うっ……!!」
 呻き声が上がり、下腹の方から熱く迸っていくものがある。
 跳ねては汁を撒き散らす肉に叩かれ、その振動でも緩く達した。
 口に重なったものが、くぐもった悲鳴を上げている。
 達したんだな、とぼんやりと覚った。

← 戻る ・ 進む→

Cut INDEXへ →
TAROTシリーズ分岐へ →