が一人で戻ってきたのを見て、凌統は青褪めた。
てっきり姜維とかいうのに送らせて来るものだと思っていただけに、無事に戻ってきたとは言え腹立たしくなる。
「あんたな!」
怒鳴りつけようとしたのだが、どうも様子がおかしい。
ぽーっとして、頬も紅潮している。
まさか、と口元が引き攣るが、春花の手前追求するわけにもいかない。
と、春花がととと、とに走り寄り、腰に手を当てて仁王立ちになった。
「さまっ! まさか、またですかー!」
はっとして春花を見返すは、しばらくどう答えたものかと考え込んでいるようだった。
「……えへっ」
「えへっ、じゃありません!」
凌統は、目の前で繰り広げられる漫才に、しばし呆然として観戦体勢に入った。
遣り取りを聞く限り、どうもは隙が多いらしく、見初められた相手に付け入られることがしばしばあるらしい。貞節とか、そういう観念が今一つ曖昧なのか、のずれた言い訳は春花の怒りに油を注ぐばかりだ。
「う、あの、でも、姜維も分かってくれたよ!」
「そういうのは分かったと言うんじゃないんです、垂らしこんだと言うんです!」
何にもしてないのに、ただぎゅーってしただけなのにとが喚く。
「挿れなきゃいいってもんじゃありません!」
春花の言葉も段々と赤裸々になり、凌統は存在を無視されたまま破廉恥な説教話に耳を傾けていなければならなかった。
ふと、扉の外に気配を感じ、殺気を殺して身構える。
「春花、私だ」
私で通じると思うのか、と思ったが、春花は飛びつくようにして扉を開けてしまう。凌統が待ったをかける暇もない。
趙雲が当たり前のように入ってきて、凌統に拱手の礼をする。
渋々応えて頭を下げると、春花が凌統の手を取った。
「趙雲様、私、凌統様と出かけて参りますので、さまをよろしくお願いいたします」
言うや否や、凌統を引き摺って廊下へ飛び出していく。
趙雲は苦笑しつつも二人を見送り、扉を閉めた。
「……子龍、殿の警護は?」
「尚香様が代わって下さった…どうしても、の所へ行ってこいとのご命令でな」
普段ならそろそろ宴の時間だが、昨日の騒ぎで取り止めになっている。
なので、時間はあると言えば、ある。
抱き寄せられて、身を固くした。
体には、姜維の移り香が染み付いている。
何もされていないとは言い難く、趙雲に対して後ろめたさを感じた。
ひょいと持ち上げられ、寝台へと運ばれる。
「……子龍、何も言わないの?」
何を、と逆に問われてしまい、返す言葉を見つけられずに黙り込む。
「は、こうと決めたら翻す女ではないだろう?」
「……分かんないよ、子龍が『こうしろ』って言ったら、そうするかもしれないよ」
それで、後でさんざん後悔して不貞腐れて八つ当たりされるのか、と子龍は大袈裟に溜息を吐いた。
「御免被る。私はそれほど暇でも寛大でもない」
わざとらしい仕草に、はむっとして趙雲を睨めつける。
趙雲は、の口の相手は飽きたと言わんばかりに口を噤み、代わりに衣服を脱がすのに忙しく指を動かした。
「……って言うか、何か当たり前にしようとしてない?」
逆らいこそしないが、趙雲の指で暴かれていく自分の体を、何となく情けない思いで見つめる。
「当たり前では何かまずいのか?」
趙雲は、脱がせた衣服を片端から牀の下に落としてしまう。
「私が何度お前に言ったと思っている。お前は、私の物だ。共に蜀に帰るぞと、あれほど言っておいたのに」
先に劉備に宣言されては、趙雲も手の出しようがない。
それを分かっていて先手を打ったのだ。趙雲は、その卑劣さに憤る。
「……先に言ったら、子龍、許してくれないでしょ」
当たり前だ。
口調に怒気がわずかに滲む。
「今日と言う今日は、手加減などしない。罰だ、。許せといっても、決して許さないからそう思え」
いつもそうじゃないかと喚くのを、手巾を取り出し塞いでしまう。
手首は髪紐で封じ、解けないよう固く戒めてしまった。
押さえつけて、耳朶に舌を這わせると、の体がびくりと跳ねる。塞がれた唇から、くぐもった呻き声が漏れるが、趙雲は力任せにの抵抗を封じ、柔らかくゆっくりと耳の形をなぞっていく。
ぬるりと耳孔に舌を突き入れれば、趙雲の体を持ち上げる勢いで体が跳ね上がり、の眦に涙が浮かぶ。
の秘部は、既に潤っているに違いない。
けれど、趙雲は敢えて耳への愛撫に固執する。
ひっきりなしに声が上がり、の体は全身朱色に染まった。それでも、趙雲は耳への愛撫を止めない。時折、気が向いたように乳房や唇を指で撫で摩ったりもするのだが、舌と唇はの耳から離れようとはしなかった。
呻き声が徐々に小さくなり、口呼吸を塞がれたのが下品に鼻息を荒げて呼吸するようになって、ようやく趙雲は愛撫を止め、の口に突っ込んだ手巾を解いた。
口が自由を取り戻しても、言葉を発することができずには趙雲を見上げた。
視界が潤んで、霞がかっている。何故か趙雲の顔だけは、ぼやけることもなく映っていた。
唇が触れて、趙雲の舌が口内に滑り込んでくる。探るような優しい動きに、も舌を併せて蠢かせた。
何時の間にか慣れてしまった。
初めて口付けを交わしたのは趙雲で、きっとこういうことも無意識のうちに趙雲に覚えこまされていたのだろう。
勇気がいったが、思い切って目を薄く開けてみた。
趙雲ともろに目が合い、は爆発する勢いで顔を赤らめた。
「な、な、な」
唇が離れて、は動揺のあまりどもりまくった。
「表情を見るのが、好きなんだ」
何でもないようにしれっと答えて、趙雲はの首筋に顔を埋める。
舌の蠢く感触に、時折吸い上げられる痛みが走る。
跡を残している。それも、かなり強く。
所有印をつけられていると思っただけで、体の奥底からぞくぞくと悦が溢れ出す。
趙雲は、の首筋から胸へと、ゆっくりと移動していく。
視界に入る辺りまで趙雲の唇が移動し、やはり跡をつけているのが分かった。
「いった!」
眉を顰めて痛みを堪える。
乳房の柔らかな肉に、趙雲が歯を立てたのだ。
「子龍、痛い……」
泣きそうになるのを堪えながら訴えると、また歯を立てられた。
「罰だと言っているだろう」
そう言いつつも、また歯を立てる。
唇を噛み締めて耐えるのだが、小さく悲鳴が漏れるのはどうにも止めようがない。
趙雲も、そこまでは止める気がないのか、手巾で口を封じることもなかった。
秘裂に、趙雲の指が滑り込む。谷間の入口から、じりじりと滑り込むように指が動き、秘玉をしだくようにかき回される。
やはり痛みが伴い、はすすり泣いて趙雲に許しを求めた。
「痛い、子龍……お願いだから……」
普通にして欲しい。
止めてとは、もう言える状態ではなかった。
腹の奥底が膨れ上がったようになって、趙雲の昂ぶりで突かれるのを待ち焦がれているかのようだった。膣も、入口がひくひくと蠢いて、趙雲の慈悲をひたすら乞うている。
「挿れて欲しい?」
直接的な物言いを恥ずかしいと言っている場合ではなかった。
痛みから逃れたいのか、それとも抱かれる悦楽を麻薬のように欲してしまうのか、とにかく早く趙雲が欲しいと思った。
こくりと頷くのだが、趙雲は黙ったまま身動ぎもしない。
は困惑して趙雲を見上げ、やがて諦めたように目を伏せた。
「……あの……挿れて……」
だが、趙雲は動かない。
「……い、挿れて……子龍……?」
動かない。
の目に涙が浮かぶ。どうしていいか、分からない。
趙雲は、鋭い眼光でを睨めつける。ぞっとするような冷たさなのに、怖いぐらいに惹かれた。
「……私が欲しいなら、自分で挿れてみろ」
絶句する。
できない、と無言で拒否すると、趙雲はの上から身を起こした。
あ、と思わず声を上げると、趙雲はの横に腰を下ろし、自分の腹の上にを持ち上げた。
昂ぶりが秘裂に触れ、ぞくっとした感触に背を反らす。
しかし、趙雲はそれきり動くのを止めてしまった。を見上げ、目だけで促す。
困惑して、緩く膝立ちしたまま、趙雲の顔と昂ぶりをおろおろと見比べるだけだ。
「欲しくないのか」
「だ……って……」
どうしていいか、本当に分からないのだ。
強制的に繋がっているのを見させられたこともあるが、それとて実際どうなっているのかよく分からなかった。 濃い茂みの中に、グロテスクにぬるぬる光るものが出たり入ったりしている。
の感覚としてはそれしか分からなかったし、第一、そういった時の意識は掻き乱されていて、確認するどころの話ではないのだ。
恐る恐る腰を下ろしてみるが、濡れ過ぎた秘裂に先端もすべってしまって、昂ぶりは膣に受け入れられる前にの重みに倒されてしまう。
昂ぶり過ぎて、角度が合わないこともあるだろう。
濡れた襞に包まれるのも悪くはなかったが、本当に悦楽を味わいたいと思えば、やはりの中に埋め込みたいと思う。
趙雲は苦笑して、きつく引き締めていた相貌を崩した。
「あぁ、私はやはりに甘いな」
何が、と不貞腐れるの腰を一度上げさせ、指で己の昂ぶりの角度を調整すると、の膣にゆっくりと沈めていく。
「ん、あっ、あぁっ……」
無意識に急ぎ食らいつこうとするの腰を、力を篭めて押さえつけ、趙雲は己を待ち焦がれていた肉壁の感触を存分に味わう。
根元まで埋め込むと、の腰に回していた手を離した。
「……今度は、大丈夫だろう。したいようにしてみろ」
根元まで咥え込まされて、の腰はびくびくと震えている。
動け、と言われているのだろうが、痺れたようになってしまって、動くどころの騒ぎではない。
趙雲のものが震えるたび、腰が抜けそうになって膝を上げるのも一苦労なのだ。
途切れ途切れの嬌声を上げたまま、身動ぎもしないに趙雲は溜息を吐いた。
を乗せたまま膝を曲げ、反対にの膝を抱えてしまう。
「本当に、ずるい女だな、は……これでは、罰にならぬ」
言葉では詰っているが、趙雲の顔は愛しそうに微笑を浮かべている。
ゆっくりと動かされて、戒められた腕を輪のようにして、そっと趙雲の首にまわす。
「……ごめんね……」
が涙目で詫びると、趙雲は驚いたように目を見開き、突然を背中から倒した。
痛みはないが、急のことには思わず目を閉じ、跳ね上がった心臓の音を聞く。
「……まったく……本当に、ずるい女だな、お前は」
意味を問う前に、力尽くで腰を打ち付けられる。
声は嬌声と変わり、悦が神経を焼いて何も考えられなくなる。
ただ、趙雲の字だけ、何度も飽きることなく呼び続けた。